劇場公開日 2013年2月9日

「現代社会に巣食う罪と罰」脳男 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0現代社会に巣食う罪と罰

2013年2月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

感情が欠落したら人間はどうなるのだろう。この映画を観て、なるほどロボットと同じなのだとわかった。あらゆることをひとつひとつ教えていかなければ行動できない。コンピュータにプログラミングするのと変わらない作業が必要になのだ。だから、プログラミングを間違ったら誤った判断能力を身につけてしまう怖さがある。
鈴木一郎が悪を裁くのは道徳心や正義感によるものではない。悪は裁けというプログラムをインプットされたからにすぎない。
痛みをも感じない一郎はまるでターミネーターだ。

この一郎を中心に、被害者(遺族)と加害者は対峙することによって憎しみを理解に変えることができると信じる脳神経外科医の真梨子、その真梨子によって社会復帰を果たそうとする青年・志村、悪を憎む熱血刑事・茶屋、そして爆弾魔の少女・緑川を絡め、法ですべてが裁けるのかというテーマを問い詰めていく。
この作品では社会更生に一定の理解を示しながらも、理想と現実のギャップを無慈悲に叩きつけてくる。

無表情を貫く生田斗真もいいが、なんといっても狂気を隠しもせず人の命を弄ぶ緑川を演じた二階堂ふみが作品のカラーを決定づけた。現実にああいうのがいたら最悪、そう思わせる。

残念なのは、画にスキが多い。もっと情報を詰め込んでもいいのではないか。繰り返される爆破シーンも単調だ。

生田斗真の頭からジグソーバズルの1ピースが欠落したポスターが上手い。
ただポスターの横顔3人のなかに二階堂ふみが入っていないのが残念だ。生田斗真、二階堂ふみ、染谷将太の3人にしたほうが作品の内容を語ったことだろう。もし若い3人を並べたポスターなら、3人ともピースが欠落した図になっていたかもしれない。
ピースが欠落した人間を生み出すのは、複雑な人間関係を強いる現代社会だという現実の怖さを感じる。

マスター@だんだん