新暗行御史

劇場公開日:

解説

原作・尹仁完、作画・梁慶一、共に韓国人でありながら日本のコミック誌『月刊サンデーGX』で連載された人気コミックを映画化した、日韓合作による初の長編アニメーション。『暗行御史』や『春香伝』といった韓国の古典を新たな解釈でアレンジしたアクション・ファンタジー。監修・プロット・脚本を「クレヨンしんちゃん」や「サクラ大戦 活動写真」の本郷みつる監督が手がけており、その本郷監督の下でTVアニメ『カスミン』などの演出を担当した志村錠児が、劇場用アニメ初監督に挑んだ。

2004年製作/86分/日本
配給:クロックワークス
劇場公開日:2004年12月4日

あらすじ

いにしえの時代、東方に聚慎(ジュシン)という名の国があり、そこには“暗行御史(アメンオサ) ”と呼ばれる隠密要因がいた。暗行御史は、王の特使として秘密裏に地方を巡り、悪政を糾弾し、庶民を救う聚慎の特殊官吏であった。その聚慎の国は滅んだがひとりの暗行御史、文秀(ムンス/声:藤原啓治)はいまだ、乱世を流浪っていた。かつての友であり、そして聚慎を滅ぼした張本人でもある、ひとりの男の姿を求めて…。砂漠で行き倒れた文秀は、獣医の青年、夢龍(モンリョン/声:岸尾大輔)に救われる。悪辣な領主、弁(ビョン/声:中尾隆聖)に恋人の春香(チュンヒャン/声:小林沙苗)を連れ去られた夢龍は、彼女を取り戻すために暗行御史になることを夢見ていた。しかし、二人は砂漠の食人鬼・サリンジャーたちの襲撃を受け、夢龍はその凶刃に倒れてしまう。窮地を切り抜けた文秀は、夢龍の故郷である弁の領地へと向った。圧政に苦しむ民衆は、暗行御史の来訪を待望していた。そこに突然、夢龍が帰郷したため、人々は彼が暗行御史になって戻ってきたと色めき立つ。だが、そんな彼らに向って夢龍は告げる。「救いばかり求める奴に奇跡は起こらない。これから起こることは、すべて偶然だ」と。弁の眼前に現れた夢龍は、その変装を解く。彼の正体は、文秀だった。「暗行御史の出頭(おでまし)だ!」文秀は、暗行御史の証である“馬牌(マハイ)”の中でも究極の力を持つ“三馬牌”を使って、幽幻兵士(ファントム・ソルジャー)を召還し、弁の配下をなぎ倒していく。だがそこに、幽幻兵士を一刀の下に斬り倒す、ひとりの女闘士が現れた。夢龍の恋人、春香である。剣の達人である春香を、弁は催眠術によって思いのままに操ることができたのだ。春香の圧倒的な剣技によって、文秀は追いつめられていく。だが、恋人である夢龍の死を知った春香は正気を取り戻し、弁は蜂起した民衆によって討ち倒された。さらなる流浪の旅に出た文秀の後を、春香は追っていく。暗行御史の護衛である“山道(サンド)”となって、文秀とともに行くことを、彼女は選んだのだ。海岸に辿り着いた文秀と山道は、そこで記憶をなくした少年、浚(ジュン/声:福島潤)と出会う。浚の持っていた奇妙な草の葉が気になった文秀は、彼の故郷の島へと渡った。その島は一見すると、美しく平和な場所のように思えた。だが文秀は、気がついていた。島でただひとりの医師であり、その鍼(はり)で死人をも生き返らすために、「奇跡の人」と呼ばれている柳義泰(ユイテ/声:宮本充)が、自分の追い求めている“あの男”と、同じ気配を漂わせていることに…。やがて文秀に、凄腕の刺客“摩利(マーリ/声:朴路美)”の振るう剣が襲いかかった。文秀を守る山道と摩利の間で、死闘が開始される。事態が急速に動き出す中で、文秀は“奇跡”の背後に隠された、恐ろしい真実を暴き出す……。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0独特のアニメ

2025年2月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

 韓国版『北斗の拳』といった雰囲気なのか?と想像していたが、世界観、ストーリーは全く違っていた。最も違っている点は、「本当に強いのか?」と感じさせるところだ・・・

 いにしえの国、聚慎(ジュシン)に隠密要員である暗行御史(アメンオサ)は王の特命を受け、地方を巡り悪政を糾弾し、庶民を救うという特殊官吏であった。その国が滅ぼされ、目的を失った暗行御史の一人文秀(ムンス)が国を滅ぼした一人の男を追って旅をする・・・映像は、ターミネーターやマトリックスのCGをも思わせるアジアン・テイスト溢れるアニメだ。

 謎が多い主人公のムンス、強敵を蹴散らすほど圧倒的な強さを誇示するわけでもない。戦闘ではずるい手を使ったり、ちょっとひょうきんな態度も取ったりして、微笑ましかったりする。武器使うよりファントムソルジャー達を使いこなして敵を倒すのが得意の戦法で、「アメンオサだ!」と決め台詞を吐くと同時に印籠のようなモノを見せる。むしろ強いのは、山道(サンド)の春香(チュンヒャン)なのだが、言ってみれば、黄門様と助さん格さんのスタイルなのです。しかし、アメンオサとしての意地と見栄が邪魔して「助けるな!」と言ったりするので、可愛く見えるところもしばしば。

 悪い奴をこらしめたりもするが、何から何まで庶民を助けるというより、庶民に自分たちの力で悪領主を倒すように促したりして、民衆自らの手によって国を再興させるカリスマ的存在だったのではないでしょうか。「真実が見えにくくなっている」という言葉に表れているように、ヒーローによる一方的な正義を押し付けることのない、味のあるテーマが隠されているように思います。

 このアニメ映画はアメンオサとサンドの紹介と一つのエピソードだけで終わっているのでシリーズ化して何本も作られそうな予感がします。なので、ストーリーはそれほど面白いものではないのですが、キュートなヒロイン・・・しかも強く、美しく、泣き虫という惹きつけられるキャラのサンドのおかげで平均点まで上がりました。

 尚、韓国映画の『春香伝』にも出てくる暗行御史、登場人物の夢龍(モンリョン)、春香(チュンヒャン)も同じ名前で登場しますが、どの程度関連付けてあるのかはわかりません・・・勉強不足です。

【2005年2月映画館にて】

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kossy