沙羅双樹

劇場公開日:

解説

「萌の朱雀」(97)で、カンヌ映画祭カメラドール(新人監督賞)を史上最年少で受賞する鮮烈なデビューを飾り、続く「火垂(ほたる)」(00)では生と死の物語を四季を通じて織りあげた河瀬直美監督が、三たび故郷の奈良を舞台に描く。主人公の俊を演じるのは、奄美大島出身のストリート・ミュージシャンの福永幸平。俊の幼馴染み・夕(ゆう)には、1000人を超えるオーディションから選ばれた兵頭祐香。ほか生瀬勝久、樋口可南子、そして監督の河瀬直美が俊の母親、礼子役で女優としても出演。音楽をUAが担当している。16ミリからのプローアップ。2003年6月21日奈良・奈良観光会館地下劇場/大阪・シネ・リーブル梅田にて先行上映。

2003年製作/99分/日本
配給:日活=リアルプロダクツ
劇場公開日:2003年7月12日

ストーリー

1997年、夏。長い歴史を持つ奈良には、今日でも古い建造物や伝説が残っている。その旧市街地で代々墨職人を受け継いできた麻生家の、ひっそり静まりかえった作業場では、双子の兄弟が戯れている。眩しい夏の光りに誘われて路地に駆け出した兄“圭”を必死に追う“俊”は、入り組んだ辻を勢いよく駆け抜けてゆくが、ふと曲がりきった辻に消え入るかのように圭の姿を見失う。 神隠しなのか? 事件に巻き込まれたのか? 古来よりお守りとして、軒先に吊るされた身代わり猿(庚申・こうしん)だけが真実を知りうるのか……。両親の必死の捜索にもかかわらず、圭の行方は分からないまま、無常に時は過ぎてゆく。2002年、夏。17歳に成長した俊(福永幸平)は、美術部に在籍する高校生。幼馴染みの同級生・夕(兵頭祐香)とは、言葉にならない淡い気持ちを共有しあっている。今日もいつものように、自転車の後ろに夕を乗せて下校する俊。家の軒先には、色あせた身代わり猿が5年前のまま釣り下げられている。墨職人の父・卓(生瀬勝久)は、間近に迫った<バサラ祭>の実行委員長として、準備や打ち合わせに余念がない。臨月を迎えた母・礼子(河瀬直美)は、大きなお腹を抱えて畑仕事に精をだし、生まれてくる命に家族の絆が再生することを期待しているようだ。俊はといえば、屋根裏部屋にこもって、等身大のキャンバスに向かい、決して忘れることのない圭への想いを刻みつけている。女手ひとつで夕を育てあげた母、晶子(樋口可南子)は、気丈に小料理屋を切り盛りし、夕もそんな母の仕事をそっと支えている。やがて、あの日から5年目の地蔵盆の日が近づいてくる。そんなある日、俊の家を刑事が訪れ、圭の消息が知らされる。言葉にならない悲しみに沈む麻生家の中で、ひとり俊は、重すぎる事実をまだ受け止めることができずに、人目もはばからずに泣く。一方、夕は自らの出生の秘密を母から明かされる。それぞれに失ったものを胸に秘めつつ、引き寄せられるかのように二人きりになる俊と夕。夕闇が優しく彼らを包み込む。そして、バサラ祭が始まった。人々の熱気の中でも、卓の入れ込み方はひときわ群を抜いている。先頭を切って踊る躍動感に満ち溢れる夕に、人員整理係の俊も引き込まれて踊り出し、心地よい通り雨に祭りはピークに達する。翌朝、完成した俊の絵を前に、夕は手作りの身代わり猿を俊に手渡す。そんな二人の元に、礼子の様子が大変だとの知らせが卓から入る……。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

第56回 カンヌ国際映画祭(2003年)

出品

コンペティション部門
出品作品 河瀬直美
詳細情報を表示

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

映画レビュー募集中!

この作品にレビューはまだ投稿されていません。
皆さまのレビューをお待ちしています。
みんなに感想を伝えましょう!

レビューを書く