不敵な男
劇場公開日:1958年9月7日
解説
「氷壁」の新藤兼人のオリジナル・シナリオを、「巨人と玩具」の増村保造が監督したアクション・ドラマで、最低の男と呼ばれる一青年の追いつめられた悲恋を描こうというもの。撮影は「巨人と玩具」の村井博。「息子の結婚」の川口浩、「赤線の灯は消えず」の野添ひとみをはじめ、川上康子・船越英二・市川和子などか出演している。
1958年製作/85分/日本
原題または英題:The Lowest Man
配給:大映
劇場公開日:1958年9月7日
ストーリー
サブは国広一家のチンピラだ。二十二歳、群馬県生れ、前科三犯。女のヒモ。田舎からポット出の娘を、だまして旅館に連れこみ、暴力で関係をつけて叩き売る。国広一家はときに請負って人殺しもやる。トリスバーのマダム・咲枝の旦那を消したのも、国広の命でサブたちがやった仕事だ。サブは田舎娘の山辺秀子を例の手口にひっかけた。が、井川刑事に検挙され、一年の刑務所送りになった。--刑務所で彼は平和に暮した。そこを出てから後の彼の生活には、もう二度とそんな時は訪れなかった。咲枝は赤線廃止後も、もぐりでアイマイ宿をやっていた。国広が後にい、ひそかに警察のものとも連絡をとっていた。サブは出てくると、そこに秀子がつとめているのに会った。彼女は人が変ったようだった。きれいにもなっていた。一月前、そこへ来たという。ヒモになってやろうか。サブが秀子をホテルへ連れこんだとき、彼女は彼をナイフで刺した。ざまあ見ろ。お前が出てくるのを一年間待っていたんだ。サブは病院の費用に、弟分の松五郎と盗みを働く。サブは秀子にまた会い、烈しくののしられる。わたしの一生をふみつぶしたお前が、野たれ死をするのを見たいんだよ。サブは井川刑事に誘われ、彼の家に連れて行かれ、初めて家庭の暖かさに接した。国広と連絡のあった警部がクビになり、国広はそれをサブが井川に通報したからと思った。井川は国広一味に撃たれて死んだ。サブは秀子を高松の方のボスに売れと命ぜられた。彼もあっちで眠らせてやろう。サブは秀子を沼津で降し、逃がしてやろうとした。秀子はお前を連絡船から突き落してやろうと思ったんだと言った。サブは東京のもとの室へ舞いもどった。秀子が現れた。二人はののしり合い、殴り合い、--が、急にサブは彼女をしめ殺すようにして唇を押しつけた。そのとき、国広が現れ、サブと乱闘になった。二人の争いを秀子は冷く見守った。サブは国広の拳銃で彼を殺す。--非常警戒が行われ、国広一家も彼を狙った。サブは拳銃を持ってどぶねずみのように逃げ廻った。一度だけ秀子に会いたかった。彼の呼び出しで、秀子の待つ部屋のそばで、サブは国広一家のものに射たれる。サブは警官隊に包囲された。井川刑事を殺したのは国広組だ! 去年の陸橋の人殺しも奴らだ! サブは血まみれで叫んだ。彼は最後に秀子の名を呼ぶと息絶えた。見下す秀子の眼は冷たかった。が、彼の遺骸が運び去られるとき、その冷い眼に涙が光っていた。