野口英世の少年時代
劇場公開日:1956年2月25日
解説
かつての世界的な細菌学者の少年時代を描き、周囲の愛情にまもられて、赤貧と不具の身が勉学のため出郷するという文部省特選の児童劇映画。小学上級以上一般向。同スタッフ六本目の東映中篇児童劇映画中でも、著名人の物語はこれが最初である。野口英世の功績をつたえる写真や石ひ等に始まり、その不とう不屈の精神は彼の少年時代につちかわれたと劇に入る。
1956年製作/50分/日本
原題または英題:The Boyhood of Dr.Noguchi
配給:東映
劇場公開日:1956年2月25日
ストーリー
明治二二年の早春、磐梯山ろくの風物から小学卒業生の試験場となり、清作(英世の幼名)は口頭試問で、立会いの郡視学たちも目をみはる成績を示す。試験官の小林先生(原保美)も清作がかくしている不具の左手を発見して、卒業しても百姓はむりだろうと同情して相談にのるからといい、清作も目をかがやかす。 ひとがいいのに、のんべえで働きのない父(浅野進治郎)のため母(岸輝子)はダ賃取りで働くほどの貧乏だが、年頃の美しい姉が家にブラブラしてるようなのはどうも解せない。しかし幼児の清作がろばたにころがって左手をやけどする回想場面は圧巻で、ために母は清作を人一倍いとしむことになる。 小林先生の知遇によって貧農の子せがれは破格の高等小学に進学し、その不具のために級友にからかわれるが、かれらも非を単純にわびる。母も世間から皮肉な目でみられながらも産姿になる勉強をはじめ、さあ競争するんだと清作をはげます。また内職? のため夜ふけてまで湖に出て手網で魚をとる母は、めをさまして手伝いにきた清作に、むしろ勉強しろとしかりつける。 いよいよ卒業をまえにして清作は、郡の教育主任から出された理科の難問に答えて舌をまかれる。その主任から将来の希望をきかれて教員志望というが、その手では体格検査のやかましい教員はむりだろうといわれて小林先生も共に落たんする。そしていつも熱心なのに小林先生の理科の時間でもそわそわしていた清作は、ひとりになると解ぼうナイフで自分の左手を切ろうとして先生や級友たちにとめられる。先生は若松に知人の外科医がいるから手術したらとすすめ級友たちも賛成する。すぐその場で募金がなされると少年たちはいっせいに金を出す。 その手術をうけたために、はじめて清作は医者になって人々につくそうと決心する。手術も無事にすんで卒業式となるが、かんじんの手はどうなったのか、式場で卒業証書をもった全員の全景はあったが清作の左手がはっきりしないのは大変もどかしい。最後は医者の書生になるため出郷するわが子をどこまでも送る母との吹雪中の別れを高潮さしておわる。