浅草の肌
劇場公開日:1950年4月15日
解説
製作は小川吉衞。原作は濱田浩(東京日日新聞連載)。脚本は「痴人の愛(1949)」「蛇姫道中」の監督の木村恵吾と、「帰国」の岸松雄の協同で、監督は木村恵吾。カメラは「静かなる決闘」の相坂操一担当。主演は「私は狙われている(1950)」の二本柳寛と、「痴人の愛(1949)」「蛇姫道中」「遙かなり母の国」の京マチ子で、それに「一匹狼(1950)」「暴力の街」「氷中の美女」の植村謙二郎、「暴力の街」「白昼の決闘」の清水将夫、「女の四季」の藤原釜足、「魔の黄金」の伊沢一郎、「一匹狼(1950)」の菅井一郎、「笑う地球に朝が來る」の若杉須美子らが出演する。
1950年製作/90分/日本
配給:大映
劇場公開日:1950年4月15日
ストーリー
浅草は六区の裏通り、レヴュー劇場美銀座では今宵も賑やかなリズムで幕を開けたが、相変わらず入りは悪かった。プロデューサー兼演出家兼文芸部長の香取は厳格な人間であった。ある日、この美銀座に若草クルミが現れた。見事な一輪の狂い咲きの女。男という男は知りつくしたという女。そのクルミが、香取に魅せられたのだ。香取は熟れきったクルミの肉体にも一向反応を示さない。その態度が、クルミの気持ちをかえってたかぶらせたわけである。クルミは、執拗に、香取につきまとっていた。だが相変わらず香取はクルミに対して少しも反応を示さない。その頃、不振を挽回するために、裸ショーに転向するよう支配人からいわれた香取はくさってしまった。そんな時でも相変わらずクルミは香取にまとわりついた。香取は激怒してクルミを叱った。だがクルミは動じないで、かじりつくのだ。ひきはなしても、投げ飛ばしても、クルミは「女豹」の様にとびついた。やっとクルミを追い返したあと、香取ははっと一つのアイデアを思いついた。あの豹のようなクルミを、そのまま舞台に再現しよう、と。香取の意図は当たって、「女豹」と題するクルミの踊りは、浅草の人気をさらい、久しぶりに踊子たちにも明るい光がさした。さて一方飲み屋「おけい」の女主人お圭は、かつて香取と交渉があり、その妹は隼という男にもてあそばれ、お圭もまた隼のえじきになった。その男が現れて、十万円を強迫し、お圭は苦しんだ。悪党隼は、近頃売り出した美銀座の女豹クルミの肉体にひかされて、ついつい手を出したのが運のつきで、香取に見事なパンチをくらったあげく、証拠品を残したので足がついた。脱獄囚隼。非常警戒網が浅草に張られた。隼は金欲しさに「おけい」に寄ったが、そこにも手が廻っていた。いよいよ身の危機を感じた隼は、道づれに、香取を殺そうと、美銀座に忍びこんだ。このとき香取の危険を知ったクルミは必死に隼とからみあい、一瞬のはずみで逆に隼を射殺してしまった。暗然たるクルミを、香取はそっと抱きかかえた。舞台ではクルミのファンが、呼んでいる。香取は叫んだ。「クルミ、舞台だ」「えっ」と笑顔をつくってクルミは颯爽と舞台へ出る。嵐のような拍手のうちに浅草の人々に見守られながら、クルミは今の瞬間も踊り狂っている。