馬車物語
劇場公開日:1948年1月27日
解説
「恋する妻」につぐ伊藤基彦の製作で、石坂洋次郎の原作(文藝春秋所載「馬事物語」)を「面影」「雲は天才である」の館岡謙之助が脚色し、「虞美人草」「ワンワン物語」の中川信夫復帰第一回の演出である。撮影は終戦後第一回の平野好美担当。主演は「新馬鹿時代」の榎本健一、「浮世も天国」の水原久美子で、それに「踊子物語」の徳川夢声、「春の目ざめ」の飯田蝶子、「見たり聞いたりためしたり」の灰田勝彦らが助演。
1948年製作/69分/日本
配給:新東宝
劇場公開日:1948年1月27日
ストーリー
東北の片田舎。寅市は町と岩木村をつなぐ乗合馬車の馭者である。今日岩木村で芸能コンクールがあり、彼も出場しようと思っている。馬車にはコンクール審査員の小説家石中先生と名妓ポン太、墓相学の大家泰軒それに寅市の親類のユミコ婆さんが仲人をした花嫁を迎えにいくためにのっている。馬車は岩木村についた。村の近代青年島田庄一郎は石中先生たちを迎えた。島田家は没落の運命にあり、当主庄左衛門は怪し気な墓相学の泰軒を招いて墓相をみてもらうことになったのだ。一方ユミコ婆さんは明日町へ嫁にいく富山モヨ子の家にいく。寅市も富山家へいき何かと手つだわされる。寅市はひそかにモヨ子を想っているのだ。しかしモヨ子は田舎の古いしきたりの中で、たった一度見合した男のところへいってしまうのでさびしい気持である。その夜富山家は祝い酒でにぎわった。寅市とモヨ子はこっそりコンクール場にいく。コンクール場にかけつけたモヨ子は娘時代の最後を思いきりうたうのだった。寅市もうたった。引続いて座談会があり石中先生をかこみ恋愛と結婚について珍問答が交される。寅市とモヨ子は並んで帰路につく。何か二人ともさびしいのである。翌朝花嫁とその両親を加えた昨日と同じ人たちをのせて馬車は走っている。と、町から馬をとばせた使者がきて、ユミコ婆さんや両親をおろし、花婿の急死をつたえる。石中先生たちもそれを聞いて驚ろく。一度家を出た花嫁はもう帰ることは出来ないと婆さんも、両親も途方にくれる。馬車にのこった寅市とモヨ子は何も知らずに歌をうたい出した。ふと、婆さんはモヨ子を寅市の嫁にしたらと提案する。そして二人を呼んで相談する。寅市たちは突然のことにとまどってしまう。そのとき泰軒が、附近の墓をみて墓相学で占うといい、占ってみるとまたとない良縁だというので両親も安心し、寅市もモヨ子もさすがにうれしい。--すべてが解決して馬車はいきおいよくはしっていく--。