密会(1959)

劇場公開日:

解説

週刊新潮所載の吉村昭の同名小説の映画化。不倫の恋にふける大学教授夫人が、密会中に殺人事件を目撃したために破滅の道をたどるというサスペンス・ドラマ。「その壁を砕け」の中平康が脚色・監督、「海底から来た女」の山崎善弘が撮影した。

1959年製作/71分/日本
原題または英題:A Secret Rendezvous
配給:日活
劇場公開日:1959年11月11日

あらすじ

紀久子は大学教授宮原雄一郎の妻だ。十四も年上の堅苦しい学者生活を送る夫との味気ない結婚生活。いつか彼女は、毎月自宅で行われる法科学生の集り・二十日会のメンバーの一人、川島郁夫と不倫の恋におちた。--その夜も紀久子は、自宅の近くの林の中で郁夫の激しい抱擁に身をまかせていた。そのとき、突然、二人の目前でタクシー強盗事件が起った。雲間をもれた月光に浮んだ被害者の無気味な姿。二人は現場から逃げた。目撃者として警察に出頭すれば二人の不倫の恋も明るみに出る。思考はめまぐるしく回転した。誰かに顔を見られなかったか、紀久子は不安な一夜を過した。翌朝、平静をよそおいつつ夫を送り出した。女中のさよが、昨夜の強盗事件を語った。紀久子は深い悔恨に涙した。一方、郁夫もラジオで強盗事件を知り、さらにテレビで被害者の家族の悲しみと悲惨な生活を知り、唯一の目撃者として捜査に協力すべきだという正義感に駆られた。しかし、紀久子の苦境を思うと、ただ焦躁に悩むだけ。外出から帰った妹の英子が「いま乗ってきたタクシーの運転手、顔にも頭にも傷あとがあるの、去年、自動車強盗にあったんだって……」という言葉に、郁夫はたまらず表へ飛び出した。その足で郁夫は紀久子を訪ね、警察に届けようと話した。紀久子は、それを止まるよう懇願した。翌日、紀久子が郁夫の下宿を訪ねた。夫に知れたら、私は終りよ--紀久子の言葉に郁夫は、自分との関係がたわむれに過ぎなかったことを知った。郁夫は黙って外へ出た。小田急線のある駅のホームに立った郁夫を、追ってきた紀久子が認めた。特急の通過を知らせる駅のアナウンス。今は憎悪に燃えた紀久子は、轟然と近づいた電車に、郁夫の背を押した。「飛込自殺だ」と叫ぶ群衆を後に紀久子は駅を出て足早やに住宅街の坂を歩いた。ようやく安堵の色がわいた紀久子--その後へ自転車で近づいた工員風の男二人、その一人が紀久子の腕をつかんで言った。「見ていたぞ!お前の真上で電気工事をしていたんだ」--。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0なし

2025年5月9日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

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驚く

完成したばかりの「ゆいの森あらかわ」へ出かけた。
図書館を中心とした複合施設である。

さて、「吉村昭記念文学館」が今回の目的である。
マスターは吉村作品はその精緻さに感心して高校時代から読んでいた。
就職後、荒川区と縁があり、吉村氏の育った日暮里界隈は行動範囲となり
ますます吉村作品を読むようになった。
そのため私もこの文学館の会員となっている。

今回は、その吉村氏の映像化作品を館内で上映するというので出かけてみた。
館内に12名分の椅子席が用意されている一角がある。
そこでDVDをプロジェクター上映する。
マスターの訪問した日は「密会」の上映日だった。
ポスターが飾られている。

本題に戻る。
本作は吉村氏が「初めて原稿料をもらった」小説で
週刊誌掲載後わずか一年の映画化である。
監督は中平康。

製作スタッフは「あいつと私」とほぼ同じ。

上映開始前に全席満員。

上映開始。(入場無料)
冒頭から大学教授の若い妻と、夫の教え子の大学生のラブシーン。
二人とも着衣だが、手や顔の動きは十分ねっとりとしている。これが結構長い。
夫役の宮口精二が出てくると「あら懐かしい。おなじみの顔」と
独り言をいった観客がいた。
何しろ57年前の映画である。
白黒画面の光彩処理や、季節の変化、野良犬の行動を絡ませる
画面作りはなくかしさも感じさせる。

この手の話は中盤は凡庸な描写とならざるを得ないが
ラスト近くの駅のシーンのカメラワークは意外性を感じてよかった。

しかし当時はいくら正義漢でも警察官も駅員も帯同せずに
ああいう行動をとるコンセサンスがあったのだろうか。
亡母がこの映画を見ていたら「最後はクダラン。お笑いものだ。」
といったかもしれない。

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