無法松の一生(1958)

劇場公開日:

解説

岩下俊作の原作から故伊丹万作と稲垣浩が脚色、「柳生武芸帳 双龍秘劔」の稲垣浩が再び監督する往年の名作の再映画化。撮影は「遥かなる男」の山田一夫が担当した。「柳生武芸帳 双龍秘劔」の三船敏郎、「張込み」の高峰秀子という顔合せに、芥川比呂志、笠智衆、宮口精二、多々良純、有島一郎などが出演。色彩はアグファカラー。

1958年製作/104分/日本
原題:Muhomatsu,the Rikisha-Man
配給:東宝
劇場公開日:1958年4月22日

ストーリー

明治三十年の初秋--九州小倉の古船場に博奕で故郷を追われていた人力車夫の富島松五郎が、昔ながらの“無法松”で舞戻ってきた。芝居小屋の木戸を突かれた腹いせに、同僚の熊吉とマス席でニンニクを炊いたりする暴れん坊も、仲裁の結城親分にはさっぱりわびるという、竹を割ったような意気と侠気をもっていた。日露戦争の勝利に沸きかえっている頃、松五郎は木から落ちて足を痛めた少年を救った。それが縁で、少年の父吉岡大尉の家に出入りするようになった。大尉は松五郎の、豪傑ぶりを知って、彼を可愛がった。酔えば美声で追分を唄う松五郎も、良子夫人の前では赤くなって声も出なかった。大尉は雨天の演習で風邪をひき、それが原因で急死した。残る母子は何かと松五郎を頼りにしていた。松五郎は引込み勝ちな敏雄と一緒に運動会に出たり、鯉のぼりをあげたりして、なにかと彼を励げました。そんなことが天涯孤独な松五郎に、生甲斐を感じさせた。世の中が明治から大正に変って、敏雄は小倉中学の四年になった。すっかり成長した敏雄は、他校の生徒と喧嘩をして母をハラハラさせ、松五郎を喜ばせた。高校に入るため敏雄は小倉を去った。松五郎は愛するものを奪われて、めっきり年をとり酒に親しむようになった。酔眼にうつる影は良子夫人の面影であった。大正六年の祇園祭の日、敏雄は夏休みを利用して、本場の祇園太鼓をききたいという先生を連れて小倉に帰って来た。松五郎は自からバチを取った。彼の老いたる血は撥と共に躍った。離れ行く敏雄への愛着、良子夫人への思慕、複雑な想いをこめて打つ太鼓の音は、聞く人々の心をうった。数日後、松五郎は飄然と吉岡家を訪れた。物言わぬ松五郎のまなこには、涙があふれていた。それ以来、松五郎は夫人の前から姿を消してしまった。雪の降る日、かつて敏雄を連れて通った小学校の校庭に、かすかな笑みをうかべた松五郎が倒れていた。残された柳行李の中には、吉岡家からもらった数々のご祝儀の品々が手をつけられずにあった。その奥底には敏雄と夫人宛の貯金通帳もしまわれていた。良子夫人は泣きくずれるのだった。

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受賞歴

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映画レビュー

5.0身分の違いが綾を成す。純情男の凄絶なまでの片想い。

2023年4月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

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kazz

3.5せつなかった

2023年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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吉泉知彦

4.5素晴らしい映像

2023年3月26日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

幸せ

稲垣浩監督による、セルフリメイク「無法松の一生」。
戦後のスター三船敏郎を迎えて製作され、素晴らしい出来でした。

やっぱり4kの映像は美しいですね。そこに古き良き日本がありました。
三船敏郎の存在感が圧倒的で終盤の祇園太鼓を打つ姿は様になってめちゃくちゃ格好よかったです。それから顔役の笠智衆、晩年しか見たことなかったので、非常にりりしかった。高峰秀子さんは綺麗でした。

今回TOHOスコープで上映されて嬉しく思いました。
午前十時の映画際には、今後も旧作邦画を増やして上映して欲しいです。

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エンジェル・ハート

5.0戦前と戦後を比べることで、日本映画から何か奪われたのか?分かる名作でもある

2023年3月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

午前10時の映画祭で、稲垣浩監督の名作『無法松の一生』を戦前と戦後版を同時期に公開する粋な計らいがあり連続鑑賞。

1943年の戦前版は、製作会社が当時の大映になり監督と脚本は稲垣浩と伊丹万作になるが、主演はサイレントの頃からのスターでもある坂東妻三郎の代表作の一つになっている

1958年の戦戦後版は、製作会社が東宝になり監督と脚本は、同じ稲垣浩と伊丹万作になるが、主演は東宝のスターでもある三船敏郎になり撮影もカラーシネマスコープでロケ撮影にも凝ってエキストラも何気に大量導入した大作に近い。

有名な話ではあるが、戦前版は当時の内務省の検閲によって不適合と思われる部分をカットされており更に戦後に日本を占領したGHQからも検閲を受けて完成版から約18分程削除され短くなっている。
(自由の無い恐ろしい時代の証言でもある)
今回の上映ではその経緯も、含めた短編ドキュメンタリー最初に公開されるのも嬉しい。

個人的には戦前版の撮影を担当した宮川一夫の絵図作りに魅了されたのだが、なんと言っても、松が最後にみる走馬灯の場面は、複雑な多重露光を、繊細なカット割で美しく幻想的に仕上げて絵画にも劣らない出来映えであり、その点は戦後版のカラーの色鮮やかさを活かした冒頭の彩とりどりの小物やお菓子をタイトルバックに魅せるのも良いが、走馬灯部分は、多重のほかにネガの反転処理など導入して非現実性を強調してるが、その後に多くの作品に安易な形で多用された手法でもあり、やはり戦前の方が鋭く色褪せない(モノクロだけどね)

それ以外の撮影場面でも、凧を絡ませて途方に暮れているボンを見かねて仕事そっちのけで助け舟を出すと乗客が怒る一連の場面は、普通より動きが、車輪の回転なども含めゆったりとした絶妙なスロー感な動きになっており何処か夢心地な空間に誘われる描写があり目を引く。

松が子供の頃に父親を訪ねて森を歩く場面は、戦前版だけ観ると夜道に見えず、昼間に撮影されたのが、丸分かりだが当時の撮影条件や技術を考慮して戦後版も比較すると、明らか戦後版の方が暗い森になっており分かり易いが、幻想的にに森に現れる怪物達は、多重露光を使った戦前版の方が、風貌も含め不気味だと思う。

カメラワークなども冒頭は近い動きをしているが、戦後版の撮影を担当した山田一夫のオーソドックスで安定した職人技で健闘しているが、比較するとやはり物足りない。(宮川一夫は亡くなるまで頑なに戦後版を見なかったそうです)

配役はどちらも適材適所だが、戦後版は東宝映画なので、見慣れ人ならやや定番過ぎて新鮮味は薄いかも。未亡人役も実力も人気も申し分ない高峰秀子は見事な演技だが個人に幼さもあり可愛い過ぎる印象で、戦前版の園井恵子のしっとりとした色香も含め素晴らしい。(彼女はそのあとに巡業先の広島で原爆の犠牲者になり早逝された…作品に起きた戦争による悲劇もそうだが、本当に現実の戦争は善悪を問わずろくなモノではない)

結城組の親分は、迫力ある佇まいも含め断然戦前の月形龍之介だと思う。戦後版も志村喬あたりならまた違うかもしれませんが。

見せ場でもある太鼓打ちの場面は、戦後版の方が録音などの音響面の助けもあるかもしれないが分かりやすい。

それを踏まえて作品を観ても、どちらも優劣を付け難いくらいに素晴らしく、日本映画の名作として多くの人に観てもらいたい。

とにかく戦前版の時代を超えた優美さにウットリして、検閲から解き放たれた戦後版は、わかりやすいドラマになっておりどちら共に観るをオススメしたい。

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