無法松の一生(1958)

劇場公開日:

解説

岩下俊作の原作から故伊丹万作と稲垣浩が脚色、「柳生武芸帳 双龍秘劔」の稲垣浩が再び監督する往年の名作の再映画化。撮影は「遥かなる男」の山田一夫が担当した。「柳生武芸帳 双龍秘劔」の三船敏郎、「張込み」の高峰秀子という顔合せに、芥川比呂志、笠智衆、宮口精二、多々良純、有島一郎などが出演。色彩はアグファカラー。

1958年製作/104分/日本
原題:Muhomatsu,the Rikisha-Man
配給:東宝

ストーリー

明治三十年の初秋--九州小倉の古船場に博奕で故郷を追われていた人力車夫の富島松五郎が、昔ながらの“無法松”で舞戻ってきた。芝居小屋の木戸を突かれた腹いせに、同僚の熊吉とマス席でニンニクを炊いたりする暴れん坊も、仲裁の結城親分にはさっぱりわびるという、竹を割ったような意気と侠気をもっていた。日露戦争の勝利に沸きかえっている頃、松五郎は木から落ちて足を痛めた少年を救った。それが縁で、少年の父吉岡大尉の家に出入りするようになった。大尉は松五郎の、豪傑ぶりを知って、彼を可愛がった。酔えば美声で追分を唄う松五郎も、良子夫人の前では赤くなって声も出なかった。大尉は雨天の演習で風邪をひき、それが原因で急死した。残る母子は何かと松五郎を頼りにしていた。松五郎は引込み勝ちな敏雄と一緒に運動会に出たり、鯉のぼりをあげたりして、なにかと彼を励げました。そんなことが天涯孤独な松五郎に、生甲斐を感じさせた。世の中が明治から大正に変って、敏雄は小倉中学の四年になった。すっかり成長した敏雄は、他校の生徒と喧嘩をして母をハラハラさせ、松五郎を喜ばせた。高校に入るため敏雄は小倉を去った。松五郎は愛するものを奪われて、めっきり年をとり酒に親しむようになった。酔眼にうつる影は良子夫人の面影であった。大正六年の祇園祭の日、敏雄は夏休みを利用して、本場の祇園太鼓をききたいという先生を連れて小倉に帰って来た。松五郎は自からバチを取った。彼の老いたる血は撥と共に躍った。離れ行く敏雄への愛着、良子夫人への思慕、複雑な想いをこめて打つ太鼓の音は、聞く人々の心をうった。数日後、松五郎は飄然と吉岡家を訪れた。物言わぬ松五郎のまなこには、涙があふれていた。それ以来、松五郎は夫人の前から姿を消してしまった。雪の降る日、かつて敏雄を連れて通った小学校の校庭に、かすかな笑みをうかべた松五郎が倒れていた。残された柳行李の中には、吉岡家からもらった数々のご祝儀の品々が手をつけられずにあった。その奥底には敏雄と夫人宛の貯金通帳もしまわれていた。良子夫人は泣きくずれるのだった。

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映画レビュー

4.0最期の場所が。。!

2023年3月19日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

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リボン

4.0廻る人力車の車輪が語る無法松の運命

2023年3月19日
iPhoneアプリから投稿

以前、阪東妻三郎版を観て感激しましたが、リメイク版の本作も非常に丁寧に作られていて、クラシックな日本映画の良さを再認識しました。ストーリーは、人力車夫と、軍人の未亡人と息子との十数年の交流のドラマで、無法松が老境に差し掛かって長年の未亡人への恋情に気がつき、激しく自己嫌悪に陥るシーンは圧巻です。阪妻版では、ここらへんが当時の検閲に引っ掛かったようですが、まさにここが無法松の美しいまでにストイックな男気が感じられる所であり、根本的な部分を見落としているとしか思えません。阪妻は歌舞伎役者出身らしくメリハリのある演じ方が魅力で、三船敏郎は豪快さが持ち味と、甲乙つけがたいです。また、未亡人役の高峰秀子の穏やかな佇まいや所作が美しかったです。土地の顔役の笠智衆が最初と最後のシーンで、いい味を出しているのも、またよきかな。

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シネマディクト

4.5漢 三船松五郎の幸せな生き様

2022年3月24日
iPhoneアプリから投稿

人力車の車輪と共に進む時の流れ。
知らない時代への郷愁と共に自らの人生すら顧みさせる映画。芝居小屋、掛け時計、小倉祇園太鼓、建物街並み。
今時あんなピュアな人はいないだろうけど、いろんな登場人物の人生を重ね合わせるキーパーソン。
どんな年代の人が見ても引き込まれる仕組みが見事。
最後の松五郎に近くなった私は各年代の登場人物に思いが至る。
吉岡の奥様は高峰秀子で良かった。やさぐれの若者からくだまく老人まで演じきった三船。当時の映画界の実力も感じる。

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HigeKobo

2.5わしゃぁ・・寂しかったんぢゃっ・・

2022年2月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

楽しい

知的

内容は福岡県小倉を舞台にした無法者松五郎『松っあん』と友人で急逝した陸軍大尉の吉岡家遺族(母と子)との交流物語『わしの心は汚いっ』は男女関係を卑下する所があり。それは自分の幼少期と被る所が原因であり、だからこそ弱い自分を強く見せたいと強くあろうとする振る舞いで自分自身に行動で言い聞かせていた様に感じさせ胸が締め付けられました。最後の雪のシーンは心象風景が冷たいが美しく車輪が止まる(死)シーンとボンボンの学生帽子を死装束としている辺りが、松っあんが幼少期に戻りたいと思え、そして戻れたのかもなぁと思います。

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コバヤシマル
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