藤十郎の恋のレビュー・感想・評価
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おさん茂兵衛 心と血で贖った芝居
「藤十郎の恋」という言葉を初めて知ったのは子どもの頃。長谷川町子さん(サザエさんの作者)は歌舞伎も好きでよく題材にしていて、その漫画(もちろん、パロディ)で知った。それが映画に、それも京マチ子と長谷川一夫!とは知りませんでした。原作は菊池寛なのかー!すごい!確か菊池寛と長谷川町子さん(或いは姉妹の方)はお仕事つながりがあったような気がします。これも長谷川町子さんの漫画から!
眉なしお歯黒の京マチ子は最強無敵。着物姿も裾捌きも笑顔も涙も真っ青になる場面も全部美しい。対する長谷川一夫、羽織を着たり脱いだりの仕草一つ一つが細部まで神経細やかで、近松と話しながらのお点前も、サラサラと流れるように自然でこれまた美しい。さすが、宝塚のベルばら指導の方です。
圧巻は、お梶=京マチ子にけしかける「藤十郎の恋」の場面です。長谷川一夫は藤十郎を演じ、近松の新作台本の茂兵衛を演じながら、藤十郎として冷静にお梶におさんを重ねて観察する、その目の凄いこと!茂兵衛を演じていたかと思うと、藤十郎に戻る。お梶といえば内心ではもともと憧れていた藤様(とうさま)から口説かれたのだから。お梶の涙、言葉、立ち姿、行灯を消して障子を開けて廊下の様子を伺う姿のなんと美しいこと。緊迫感漲る中で、夢を見ているようだった。
この時、京マチ子は31歳。なんて大人なんだろう。
リアリズムを求める上方歌舞伎、頑張ってくれー!義太夫の語りと三味線を耳にしただけで萌える人は沢山いるんだから!
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