落語長屋は花ざかり
劇場公開日:1954年3月17日
解説
「寝床」「花色木綿」「厩火事」「たらちね」「心眼」「にらみ返し」などの落語を安藤鶴夫が構成し、「伊津子とその母」の井手俊郎が脚本を書いている。監督は嘗て「兵六夢物語」でエノケンとコンビだった青柳信雄(「若様侍捕物帳 江戸姿一番手柄」)、撮影は「この恋! 五千万円」の山崎一雄、音楽は冗談音楽(ラジオ)の三木鶏郎が夫夫担当。永い闘病生活から久々に復帰した榎本健一を囲んで喜劇陣が総出演している。
1954年製作/91分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1954年3月17日
ストーリー
ここは落語長屋。義太夫狂の大家宗右衛門は、今夜も長屋一同を集めて、下手くそな義太夫でさんざんに悩ましている。その最中に遠くで火事があり、火事好きな息子の宗之助は飛び出し、これも又火事狂の越後屋の娘お花と連れだって、火事現場へ行ってしまった。伊勢屋へ店子が集っている留守に、やもめ暮しの八五郎の家へ新米の泥棒がはいったが、何も盗む物がない。所が八五郎は家賃を負けてもらおうと、着物も布団もとられたと嘘八百を並べたので、縁の下の泥棒は、たまりかねて飛び出し“おふくろが病気で”と謝った。嘘を云った八五郎も、“あっしもつい出来心で”というわけでケリ。一方、火事見物で遅くなったお花と宗之助は家を閉め出され、宗之助の叔父宗十郎の家へ泊めてもらう事になったが、宗十郎はテッキリ駈け落ちと早合点し、二人を二階の一間に押し込んでしまった。折しも鳴った雷は、二人の間を取り結ぶ縁となった。翌日、髪結のお美代の家で夫婦喧嘩が始ったが、宗右衛門の智恵でこれも円満にケリ。さらに数日、大晦日、易者右近の家に掛取りが群集し、断りかねている所へ、よろず借金のいいわけを業とする浪人伝助が現れ、無言のニラミで、見事に掛取りは退散。ところが自分の事となると全然云い訳の出来ない伝助を見て、今度は右近が、伝助の家の借金取りを追い返してしまった。そして翌日、家々の前には門松が並び、アンマ杢市が、両眼が開きます様にと薬師様へ願かけて、今日は丁度満願。眼を開いてみれば、盲目の時には判った道もわからなくなり、殊に芸者小春の美しさに較べて女房お里の醜いのに失望。小春と逢引きしている最中をお里に踏み込まれ、胸ぐら取られた瞬間に眼が覚めて、ああ夢でよかったとつぶやいた。それから数日、大工八五郎の家に千代女が輿入れし、この千代女をめぐる騒動は後をたたない。折から半鐘が鳴り渡り、あわてて飛び出す八五郎を千代女が引き止めて、別れの水盃を、と押し問答する間には火事も消えかかる仕末である。その火事の火消しを務めているのは宗右衛門の火事息子の宗之助。火事は無事鎮火し、伊勢屋も、長屋も無事安泰、落語長屋は花ざかりである。