殴り込み艦隊

劇場公開日:

解説

萱沼洋の原作を、北村勉が脚色し、「男の挑戦(1960)」の島津昇一が監督した、駆逐艦を舞台にした戦争もの。撮影は「十七才の逆襲 向う見ずの三日間」の林七郎。

1960年製作/89分/日本
配給:東映
劇場公開日:1960年10月30日

あらすじ

昭和十七年末。石山中尉は戦艦大和から第一線を志願し転任した。ラバウル基地へ物質補給の任についた駆逐艦「黒雲」の機関長付となった。「黒雲」は石山の想像とはかけ離れていた。ウィスキーグラスをなめる司令の剛田や、口三味線の春木二水など軍規のグの字もなかった。剛田はこの仲間たちの集りを自ら黒雲一家と名づけていた。石山もまた、剛田からその盃を貰った。グラマンが急襲した。いざ戦闘、「黒雲」は形相を一変した。石山は黒雲一家の真の姿を目のあたり見せられた。石山は始めて実戦を知った。敵潜水艦の襲来。石山は見事な働きをした。「黒雲」は魚雷から逃れ、敵潜水艦を撃沈した。「黒雲」はラバウルへ投錨した。乗組員は半舷上陸を許された。石山は、宇田参謀に言いよられている女性を得意の空手で救った。彼女は石山と昔なじみの芸者紫香だった。今は料亭小松の養女となり、名もタカという本名に返っていた。が、二人は別れなければならなかった。「黒雲」はラバウルを後にした。石山は大尉に昇進した。「黒雲」は傷ついた船体を佐世保に横たえた。石山は部下を引きつれ料亭小松に上りこみ、再出撃自祝壮行会を催した。そこへ、宇田参謀が駈けこんできた。士官の使用する料亭へ下士官や兵が上りこんだといってつめ寄った。宇田は石山を上官侮辱罪として身柄を拘留させた。タカを連れてきた剛田が、強引に石山を釈放させた。石山は、菊水特攻作戦に出撃することになった。大尉襟章をひきちぎり、タカに遺品として与えた。昭和二十年四月七日、「黒雲」は日向沖海戦に突入した。大和に移った剛田は、艦が沈没し、漂流するところを「黒雲」に救われた。日本艦隊は全滅に近かった。が、「黒雲」はまた敵巡洋艦に向っていった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0今の歴史観で本作を観ると、あまりのアナクロさに引いてしまうほどですが、そういう時代だったということです

2025年3月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

殴り込み艦隊

1960年10月公開
東映京都製作、白黒作品
主演は高倉健
戦艦大和から、小さな駆逐艦黒雲に転勤してきたパリッとした青年士官役で登場します
黒雲はどうやら終戦後まで生き延びた奇跡の駆逐艦雪風がモデルのようです
小さな駆逐艦黒雲はまるでヤクザ一家のように艦長を親分とした家族的な団結で奮闘する様を描きます
ガダルカナル輸送作戦、レイテ沖海戦、沖縄特攻作戦に黒雲一家の奮闘を描き、ラストにさらに架空のもう一戦に向かうところで終わります
殴り込み艦隊というネーミングはレイテ沖海戦の事とヤクザ一家の殴り込みをかけたものになっています
途中に芸者との淡いロマンスも織り込まれます
原作小説もあって、ある程度の実話をネタにしたのであろうというリアリティがあります
ロケも実際の駆逐艦を使用したものでチープさはあまり感じません
しかし、時あたかも60年安保闘争真っ盛りの世情の中での公開です
当時の左翼の方々の反発が容易に想像できます
戦争への反省も無く、戦前への逆コースを賛美する映画だ!けしからん!と

1952年に米国の占領が解け、こうした映画も自由に撮れるような世の中になりました
そうすると雨後の竹の子のようにこのような戦争映画が多数撮られるようになりました
本作もその一つという訳です
理由としては、一つは戦時中は国民に全く知らされなかった戦況の推移を映像にして振り返って紹介しようという目的でしょう
もう一つは、戦後復興が進み、ようやく戦争を過ぎ去った過去として振り返る心の余裕ができたからかと思います
かといって戦前に戻りたいというのか?というと全然違う
単に、本当はこうだったのか、実はこうだったんだということを知りたいという国民の自然な欲求だったのだろうと思います
それであまりにも重大に過ぎた結末に至った戦争を各自の心の中にどう始末していくのか、それを国民それぞれが進めていたのだと思います
映画界がその国民の思いを汲み取り映画を作るのは至極当然の事であると考えます
それに特撮の神様円谷英二を擁する東宝がこのジャンルでは強くヒット作を連発していましたから、東映もあやかりたいという理由ももちろんあるでしょう
今の歴史観で本作を観ると、あまりのアナクロさに引いてしまうほどですが、そういう時代だったということです
21世紀に本作を観る意味や意義はあるのでしょうか?
恐らくないと思います
高倉健の格好良さを観るのみでしょう
戦国時代のお話みたいなものです
ある意味時代劇みたいなものなの
かも知れません
ただ一つ言えるのは、こんな映画なんてと無かったことにはできないということです
こういう映画が求められた時代があったということです

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あき240

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