地図のない町

劇場公開日:

解説

船山馨の原作の映画化で暴力とたたかう市民たちの物語。「いろはにほへと」の共同執筆者・橋本忍と、中平康が脚色、「「キャンパス110番」より 学生野郎と娘たち」の中平康が監督した。撮影は「青年の樹(1960)」の山崎善弘。

1960年製作/96分/日本
配給:日活
劇場公開日:1960年6月11日

ストーリー

戸崎慎介が、東京に近い中都市のスラム東雲町に下宿したのには三つの理由があった。一つは医者として急患の病人を救えなかった責任感。一つは妹佐紀子が許婚者梶原と結婚する前、梓組の与太者に暴行され破談になり自殺未遂になったこと。もう一つは幼なじみの加代子がおちぶれてここで売春婦をしてい、昔の愛を取戻すためだった。慎介は善良で正直な老医師笠間の診療所で懸命に働いた。梓組の実体は近郊一帯を牛耳る暴力団で佐紀子の事件も警察は尻込み、梶原も仕返しを恐れ証言を否定し解決しなかった。梓組組長梓米吉は東雲町が市有地であるのに目をつけ、ここに市営アパートを建てひともうけしようとたくらんだ。暴力に泣く住民は笠間に窮状を訴えた。笠間は梓に談判した。ところが彼の借金が梓に肩替りし、抵当に診療所や土地が入っていた。住民たちは彼のために貧しい金を出しあった。返済期日が迫ったある日、笠間は梓組一味に襲われ重傷を負った。その頃、梓は加代子の父養七の借金のカタに、彼女を無理に妾にした。慎介は梓を殺す決心をした。梓は加代子の妾宅に通って来ると、加代子が銭湯に出かけ一時間位彼一人になった。そこを狙ってメスを持った慎介は部屋に忍びこんだ。が、そこで見たのは手術用のメスで刺殺された梓の屍体だった。あわてて一度逃げた慎介はメスにさわったことを思い出し室に戻った。メスが消えていた。一方、銭湯の帰途、加代子は手を血だらけにした養七にあった。彼も梓を殺すつもりで部屋に行ったらすでに殺されていた。二人は慎介と直感した。が、慎介も否定する。犯人は誰か。梓を殺したのは笠間だった。そして自殺した。慎介は加代子と共に、佐紀子を励まし笠間医師のあとを継いで、貧しい人々のために働く決意を新たにした。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5社会派映画+サスペンス

2022年6月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

貧しい人々が住む町での立ち退き問題で善人たちと悪人たちが対立して「正義とは?」を考えさせられる社会派映画的な前半から、殺人事件が起こって「いったい誰が殺したのか?」というサスペンス映画的な後半へと盛り上がって行く中平康監督作品。

戦後の混乱以降ずっと貧しい人達が住んでいる吹き溜めのような町がある。その町を再開発して儲けようという梓組というヤクザ崩れっぽいワルたち。その梓組のボス=滝沢修はハマリ役(笑)
貧困者の代表的存在は医者2人(宇野重吉、葉山良二)であり、途中途中で、吉行和子が集団レイプされたり、医者(葉山良二)の元カノ(南田洋子)が売春婦を止めて滝沢修の妾になるエピソードなども綴られる。

「悪い奴を罰する法律はあるが、善良な人間を守る法律は無い」というテーマを描いた社会派映画にサスペンス・ドラマを含めて描いた映画。

飽きることなく見られて、それなりに楽しい映画だった。

<映倫No.11779>

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たいちぃ