人間に賭けるな
劇場公開日:1964年8月29日
解説
寺内大吉の原作を「花嫁は十五才」の森川英太郎と「狼の王子」の田村孟が共同でシナリオを執筆、「駈け出し刑事」の前田満洲夫が監督した風俗ドラマ。撮影は「人生劇場(1964)」の間宮義雄。
1964年製作/84分/日本
配給:日活
劇場公開日:1964年8月29日
ストーリー
坂崎彰と小松妙子は、大宮競輪場の帰り途で初めて出会った。その時坂崎は、会社の金十五万円と自分の生活費を全部使い果していた。そんな坂崎が競輪で初めて大金を手にしたのは、妙子から教えられた飯田栄治に賭けた日であった。三十万という大金を手にして、妙子を探した坂崎は、競輪場でやくざに囲まれた妙子の姿を見て、強い興味を持った。坂崎は会社へ金を返済すると、二度と競輪に手を出さぬと誓いながらも、妙子のことが気になり、車のナンバーを頼りに、ある喫茶店へ妙子を訪ねた。そこで坂崎が知ったことは、妙子は、やくざの組長松吉の女房で、服役中の、松吉を助けて乾分たちの世話をしているということだった。妙子の妹美代子は、栄治と恋仲であったが、栄治は、情熱的な美代子に惹かれながらも、妙子との肉体関係から抜けることが出来なかった。二人の関係に興味をもった坂崎は、栄治の出る競輪場へと足を運んだ。相い変わらず“栄治が勝つ”とつかれたように言う、妙子に反撥して、坂崎は栄治に賭けた。だが、その予想は、見事にはずれた。美代子から、競輪選手を止めるように言われた栄治が、とまどったのだ。女ながらに、一つのものにうちこんでいる、妙子の姿に、坂崎は魅せられていった。そして二人は、いつまでも栄治に賭け続け、自然に安宿で共に過すようになった。裏切られても、尚賭けることをやめない妙子は、坂崎を振りきって、今日も、大井競輪に来ていた。だが、追いかけた坂崎が見たのは妙子の人間性を失った、賭師の姿であった。妙子には、“とことんまで賭けるんだ”と、いう執念だけが残っていたのだ。だが、今日も車券を買う妙子の前に現われたのは、妙子が警察にサシた、松吉であった。全ての賭けは破れようとしている妙子に出来ることは匕首で、松吉を刺すことであった。松吉の脇腹を刺して、妙子はまだ“栄治が勝つ”と絶叫していた。