どろ犬
劇場公開日:1964年4月18日
解説
結城昌治の原作『夜の終る時』を「成熟する季節」の池田一朗が脚色、新人佐伯孚治が監督した刑事もの。撮影は「五番町夕霧楼(1963)」の飯村雅彦。
1964年製作/92分/日本
配給:東映
劇場公開日:1964年4月18日
ストーリー
鬼刑事と異名を持つ菅井は、宮坂を恐喝罪で逮捕したのを機に、その情婦千代と面識を重ね情慾に溺れていった。赤座組代貸の山口はこの事実を握り、菅井の前で悠然と悪事を働いていた。しかも、山口がユスった金の半分は千代の手を通して菅井の懐に入っていた。菅井は泥沼に落ちこむ自分を意識しながらも、山口逮捕を恐れていた。一方徳持刑事は、自分が山口と同郷であることから、情報を流している者と疑いをかけられていた。どうにかして、自分の手で山口をと思った徳持は、単独で山口の隠れ場所大平ホテルに行きそこで菅井の姿を見て不審をもった。が一瞬速く、菅井の手は、徳持の首をしめていた。その日菅井と組んで捜査を続けていた安田は、菅井の遅くなるという電話を受け取った。しかし菅井は今日保野に行った筈だ、電話のアナウンスは保野ではなかった。安田の心に不審感が広がった。山口の弟分千葉の口から逮捕された山口は全ての尋問に否認しつづけていた。すべて菅井の入れ知恵だ。しかし、その山口は千葉のもって来たコカコーラを飲んで毒死した。そして、千葉もまた絞殺体となっていた。コカコーラに混入された劇薬スポコラミンは、先に自殺した看護婦が使ったものと同一であり、しかも、署の保管室から消えていた。安田はすぐにあの日の菅井の挙動をさぐった。電話から聞えた駅の名前は徳持が殺されたホテルのある所だ!安田は三つの殺人が全部菅井の犯行であるという点までつきとめて驚愕した。千代との生活に溺れた菅井は、良心の苛責に耐えられず、逃亡生活へと入っていった。旅行に喜ぶ千代と席を同じくした菅井は、刑事の追跡に会い手錠のまま、デッキから身を躍らせた。菅井の頭に去来したのは、山口のあの人を射抜く鋭い目であった。