霧に消えた人
劇場公開日:1963年12月21日
解説
円地文子の原作より「波浮の港」の才賀明と、「兄貴」の柏正人が共同で脚色、「アカシアの雨がやむとき」の吉村廉が監督した青春もの。撮影は「虎の子作戦」の中尾利太郎。
1963年製作/78分/日本
配給:日活
劇場公開日:1963年12月21日
ストーリー
藤崎美沙は、東上汽船に勤めて三年になるB・Gだ。一ノ関市に美沙が帰省したのも、彼女に縁談があったからだ。相手は、桐生市の織物問屋の長男で、大学卒業後、父の後を継いでいる山科槙夫だった。東京の下宿時代からずっと知っていた槙夫だが、いざ結婚となると、何故か、美沙は足ぶみするのだった。それは、格式とのれんにしばられた商家に対する不安であった。話がきまらないまま帰京して、会社づとめを始めた美沙の所に、大学時代の親友岸子の母が訪ねて来た。岸子が、家出しているというのだ。岸子には住井工業に勤める四十男の宇品という愛人がいた。二人は肉体関係も結んでいるという仲であることは美沙も知っていた。宇品を訪ねた美沙は、そこで高校時代に知りあった朝吹岳志に会った。偶然の再会を喜んだ二人は、デイトを重ねた。その際、岳志はきまって後輩の末常を、美沙は同僚の由利子を連れていた。美沙は、学生っぽくどことなく山の匂いのする岳志に好意以上のものを感じていた。一方槙夫は、上京するたびに会い美沙の気持の熟するのを待っていた。そんな日、岳志達と那須高原へハイキングに行った美沙は、清々しい山の中で、自分が本当に愛しているのは岳志であったと悟った。結婚へ着々と足固めをする二人に平行して、由利子と末常も結婚へゴールインした。槙夫も、上京して由利子の口から一部始終を聞き、美沙との交際に終止符を打った。その日の午後、岸子と宇品の心中死体が、那須高原で発見された。岸子の遺書には、「幸福とは愛することだと思います」と記されてあった。美沙は、新めて、生命の尊と神聖さを感じるのであった。