見上げてごらん夜の星を
劇場公開日:1963年11月1日
解説
永六輔の原作を石郷岡豪が脚色、「花の咲く家」の番匠義彰が監督した青春もの。撮影もコンビの生方敏夫。
1963年製作/93分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1963年11月1日
ストーリー
満天の星の下若者達がソフトボールに興じている。湯浅太平、その学友小森、山田、河野、寺山、それに教師の三輪であった。彼等は昼間働き、夜学ぶ定時制高校の生徒だった。朗らかで、人気者の太平のところへ、ある日全日制高校の女子生徒から手紙が来た。宮地由美子、そのロマンチックな名前と美しい手紙に、彼も友人も、豪華な邸宅に住む令嬢を想像していた。そんな折、全日制との合同弁論大会が開かれることになり、仕事の都合で出場不可能となった寺山に代り、四十過ぎの学生小森が出場し、見事最優秀賞を獲得した。その日、太平は初めて由美子に紹介された。想像通りの明るい美しい女学生だった。太平の工場の友人に藤本勉という男がいた。兄弟を多くもつ藤本はその生活苦に絶えず悩んでいた。太平もそんな勉を何にくれと心にかけていたが、ある日偶然に由美子の家に誘われた太平は、そこに勉の姿をみつけて吃驚した。由美子は勉のイトコだったのだ。しかしそれにも増して、太平を驚かしたのは由美子の家庭が都電の車掌である父親を中心にした、下町の長屋にごく平凡な暮しをしていたということであった。太平の全日制コンプレックスはこの日からふきとんだ。数日後、勉は昼夜の働きすぎから、ノイローゼとなり家出した。太平と由美子は勉の行方を捜し、とうとう由美子の家の囲りをうろついていた勉をみつけた。逃げようとする勉を殴りながら、太平の口から“俺れだって孤児なんだよ!”と悲痛な叫びがもれた。勉の目にも由美子の目にも涙が光っていた。そんな生徒をみて、三輪はフィアンセ恵美子の協力を得て八百屋を開店した。そこで生徒達が働きながら学ぶという懸案の理想が実現したのだ。小さな幸せを信じて、未来をみつめる若者の口から、軽やかなハミングが流れていった。