当りや大将
劇場公開日:1962年8月26日
解説
「鯨神」の新藤兼人のオリジナル・シナリオを、「あいつと私(1961)」の中平康が監督した風刺喜劇。撮影は「太陽と星」の姫田真佐久。
1962年製作/87分/日本
配給:日活
劇場公開日:1962年8月26日
ストーリー
百円札一枚あれば一日食っていけるというこの街には、古物商やバラックホテルが軒をつらね、ホルモン鍋や残飯屋の臭いが充満している。街の名物男“大将”は車に当って身には傷ひとつ負わぬ名人芸で、身体を張った商売をしている。首尾よくいった夜、おばはんのホルモン屋は上機嫌の大将やその子分たちで大変な騒ぎになる。一方、どぶのキリストといわれている山内刑事らが街の取り締まりにのり出したが、とらえどころのない住人たちをどうすることもできない。ベンテンのお初というイセイのいい女に惚れこんだ大将、売り値どおりの二万円をそろえて現れた。だがお初の口車にのせられてせっかくの金は取り上げられ、バクチでひと稼ぎととび出したものの借りた一万円もふっとんでしまった。「こうなったら意地や」大将はホルモン鍋のおばはんに目をつけた。おばはんは大将の巧みな話にひきこまれて、息子のチビ勝を大学へあげようと溜めた十八万円をそっくり預けてしまった。金を握った大将は早速お初と豪遊の末、きれいに費いはたして街へ帰って来た。ケロッとしている大将を眺め、おばはんはショウチュウをあおりつづけ、その夜タクシーにはねられて死んだ。残されたチビ勝をみて、大将ははじめて良心の痛みを感じた。なにを思ったのか二、三日後、大将は空地に子供たちのブランコを作りはじめた。だがそれは一夜にしてバクチ場がなくなると困る連中につぶされてしまった。翌日も同じことがくりかえされた。途方にくれて街を歩いていた大将の顔に生気がよみがえった。走ってくる高級車の前に大将の身体が躍った--。翌日、雨の降る街を出て行く大将の葬儀車を見送っていた山内刑事が呟いた。「大将の死を無駄にはできない」