いのちの朝
劇場公開日:1961年7月1日
解説
武者小路実篤の『暁』を、須藤勝人が脚色し、「大出世物語」の阿部豊が監督したホーム・ドラマ。撮影は「散弾銃の男」の峰重義。
1961年製作/68分/日本
原題または英題:Dawn of a Canvas
配給:日活
劇場公開日:1961年7月1日
ストーリー
吉元冬子は義兄小田のはからいで保険会社に就職した。というのは父親で画家の小次郎のためだった。芸術至上主義の小次郎は、画材が野菜とか平凡な風物が多く、一向に絵は売れず家庭は苦しくなるばかりだった。冬子は父を尊敬していた。が、母親の純子や、姉の春子は小次郎が売れる絵を書いてくれればいいとグチをこぼした。小次郎の親友村野は彼に違ったものを描かぬかとすすめた。かつて小次郎の弟子で仲違いして独立した沢辺の羽振りがいいと聞いた小次郎は決心した。冬子は父に自分の肖像を書いてくれと頼んだ。小次郎は冬子をモデルに百号の大作にしようとした。が、なかなか思うように筆は運ばなかった。ある日、村野が沢辺と小次郎の和解話を持って来た。沢辺の絵が国際コンクールに入賞し、外国に行くことになった。それで冬子に求婚したいというのだ。小次郎は断わった。冬子は初めて父に反抗した。冬子は家を出て春子のところに行った。沢辺はそんな冬子をなぐさめた。沢辺は外国に出発した。お互いに諒解が出来た小次郎と冬子が見送った。自信を取戻した小次郎の冬子像は完成した。その素晴らしい出来栄えに、批評家は讃辞を惜しまなかった。冬子が待望する父の個展も開かれた。--小次郎は沢辺が帰国したら冬子との結婚を許すといった。二人が見上げる初夏の空はあくまでも澄みわたり二人の心がとどけとばかり一筋の白い雲が地平線のかなたまで尾をひいていた。