「田舎の原風景とその風景に溶け込んだおばあちゃんの存在がすべての映画。」おばあちゃんの家 レントさんの映画レビュー(感想・評価)
田舎の原風景とその風景に溶け込んだおばあちゃんの存在がすべての映画。
長年見そびれていた作品がリバイバル上映と聞いて見てきた。表題に書いた通り、田舎の原風景とおばあちゃんの存在感がなんとも素晴らしい。ロケ地の田舎と実際にそこに暮らしていたおばあちゃんを起用しただけで本作は大成功の満点と言える作品。
あのおばあちゃんにかなう役者さんはどこを探しても見つからないだろう。まさに役者殺しといったところか。昔は動物と子供にはどんな名優もかなわないなんて言葉があったけど、これにおばあちゃんも付け加えたい。
田舎の風景も素晴らしく、明らかに狙って撮ったであろう、おばあちゃんが縁側に座って山の景色を眺めてるところなどはもはや名画の域だ。額に入れたいくらい。
では何故満点と言いながら星五つでないかというと、ここからが原点要因。本作は田舎のおばあちゃんと都会で生まれ育った孫とのひと夏の交流を描いた作品。おばあちゃんは演技経験のない素人だが、孫は子役を使っている。もちろんこの子役は芝居が上手だ。
しかし、その芝居のうまさが逆にあだとなった。というよりも監督が演技をさせすぎたきらいがある。孫の心理描写をする際にやたらとアップで撮り、表情をつけさせる。
はじめに違和感を感じたのは孫がおばあちゃんのかんざしを盗むシーンで、いかにも悪だくみを思いついたといわんばかりの表情を子役にさせる。
それまでの作品のトーンと明らかに違う演出にかなりの違和感を覚えた。この演出はこの後、何度も行われる。坂道をキャリーで下ろうとするところとか。
正直、本作はドキュメンタリーか、あるいはドキュメンタリータッチの作品にして子役にも自然な演技をさせて過剰な演出は控えるべきだったと思う。その点では音楽も過剰だった。
むしろBGMは極力排して田舎特有の音を活用してほしかった。鳥のさえずりや虫の音など。
そういった無駄とも思える演出が本作ではかなりのノイズとなり、作品の価値を下げてしまったように思える。ラストに向けて無理矢理感動させようとしてるところも含めて。
などなど、幼少期に祖母とのふれあいがなかった人間としてはかなりうがった見方となってしまった。おばあちゃんっこの人には涙腺刺激する作品なんだろうとは思うけど。
今晩は。
コメント有難うございます。
昨晩、今作品を鑑賞した際には私を本当に可愛がってくれた母方の祖父母の姿が重なってしまい・・。
初孫だったこともあるかもしれませんが、今作の男の子のように、好き勝手やっていた私に(夏休みはほぼ、総て祖父母の大きな家で暮らしていました。)怒ることなく付き合ってくれた祖父母の姿を思い出しました。
休みが終わって帰宅する私をずっと手を振って”又、おいでよ!”と言ってくれた祖父母の姿は未だに覚えています。
とても素敵な作品でした。では。