まことちゃん

劇場公開日:1980年7月26日

解説

『週刊少年サンデー』昭和51年16号よりスタートした楳図かずお原作の同名の人気漫画のアニメーション。脚本は城山昇、監督は「がんばれ!! タブチくん!!  激闘ペナントレース」の芝山努、撮影は高橋宏固がそれぞれ担当。

1980年製作/75分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1980年7月26日

あらすじ

“よいこ大賞”を取ろうと決意したまことちゃんが、いろいろなことをやるが、それが全て裏目に出て、人々を悩ますハメになる。しかし、最後にはまことちゃんの努力のカイがあって大賞を受賞。天衣無縫のまことちゃんが大人の世界に首をっっこんで引きおこす数々のエピソードをつづる。

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映画レビュー

3.0 昭和後期という時代の精神的地層を色濃く映し出す文化的事件

2025年8月29日
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鑑賞方法:VOD

興奮

知的

斬新

映画『まことちゃん』を評するにあたり、まず念頭に置かねばならぬのは、この作品が単なる児童向けアニメーションの範疇を軽々と逸脱し、昭和後期という時代の精神的地層そのものを色濃く映し出す文化的事件であった、という事実である。楳図かずおがギャグ漫画という軽佻浮薄の器を借りつつも、そこに注ぎ込んだ不条理と猥雑、そして異様なまでのエネルギーは、当時の大衆文化において比肩するものがない。映画版はその奔放さを一切希釈することなく、むしろスクリーンという巨大なキャンバスに拡張し、鑑賞者を“笑い”と“嫌悪感”の微妙な狭間に放り込むことに成功している。

芝山努の演出は、テレビシリーズ的断片性の批判を免れ得ないものの、むしろその断片性こそが、本作の内包するカオスを純粋に顕現させる装置として機能している。色彩設計の異様なビビッドさは、楳図かずおの原作が持つグロテスクな生命力を巧みに可視化し、観る者を「滑稽さ」と「狂気」の境界線へと導く。つまり、まことちゃんが垂れ流す鼻水ひと筋にすら、戦後日本の抑圧された欲望と解放への衝動が凝縮されているのだ。

ここにあるのは決して単なる不良幼児のドタバタ劇ではない。むしろそれは、社会規範という名の薄氷を踏み破り、笑いの名を借りて人間の根源的な卑小さと滑稽さを照射する“寓話”である。『まことちゃん』は下品であり、乱暴であり、同時に救済である。この相反を矛盾としてではなく、むしろ美学として提示しえた点において、本作は稀有な映画的成果を成し遂げていると言えよう。

要するに『まことちゃん』とは、芸術と俗悪、笑いと嫌悪、アニメーションと生のリアリティ、そのすべてを同時に飲み込む「昭和ギャグ文化の総体」なのである。真にこの映画を理解するとは、その鼻水まみれのイメージに、同時代を生きた我々の滑稽で哀切な肖像を見出すことである。

――これほど“下品で崇高”な映画が、他にあっただろうか。

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Chantal de Cinéphile

3.0 楳図かずお先生を偲んで

2024年11月8日
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鑑賞方法:VOD

楽しい

怖い

興奮

楳図かずお先生
2024年10月28日胃癌により88歳で他界
代表作『漂流教室』『14歳』『洗礼』など

監督は『がんばれ!!タブチくん!!』『映画ドラえもん のび太の海底鬼岩城』『映画ドラえもん のび太の魔界大冒険』『ちびまる子ちゃん』『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』の芝山努
脚本は『がんばれ!!タブチくん!!』『花の子ルンルン』『じゃりン子チエ』『ドラえもん ぼく桃太郎のなんなのさ』『帰ってきたドラえもん』の城山昇

1980年公開作品
初のアニメ化
薬師丸ひろ子主演『跳んだカップル』と同時上映された
元々は山口百恵主演『古都』と同時上映するはずだったが引退作ということもあり単独上映が決まった
ならば『翔んだカップル』単独で上映すればいいだろうと自分は思うのだが当時の現場はそういう発想がなかったのか急遽この作品が制作された
元々『まことちゃん』のアニメ化計画はあったのだが内容が内容だけに保留になっていたのかもしれない
突然空いてしまった枠をヤケクソで制作にゴーサインを送った映画会社
青天の霹靂に念願叶いノリノリの原作者楳図かずお先生はシンガーソングライターとして主題歌を歌いkazuというキャラで出演する愛情がこもった肝入り作品
突貫工事のわりにまあまあいいんじゃないの
原作ってだいたいこんな感じよ

全く知らなかったが『まことちゃん』はまことちゃんの祖父が主人公の『アゲイン』のスピンオフ作品だった
アゲインはおじいさんが若返りの薬を飲んで高校生になる話
スピンオフの方がメジャーになってしまった

なぜか本人役でツービートも登場

楳図かずお先生が厳選したであろう原作の各エピソードをアニメ化

近所の奥様たちも招いて自宅でまことちゃんと姉の美香で出し物をするエピソードが好き
特にパパとママのアソコの絵を活用するクイズが特に好き

同時代の『がきデカ』を彷彿させるが『まことちゃん』は下品の中に気品を感じる
『がきデカ』の方はどこまで行っても下品だが下品の先に文学を感じ取れる
そこに違いがある

なぜか「ぐわし」より「さばら」推し

何が1番驚いたって楳図かずお先生が亡くなった年齢88歳!

吉祥寺のまことちゃんハウスは国の重要文化財として手厚く保護しろ!なのら

声の配役
幼稚園児の沢田まことに杉山佳寿子
まことの姉の美香に吉田理保子
まことのパパに柳沢真一
まことのママに小原乃梨子
まことのおじいさんに千葉順二
まことのおばあさんに中島喜美栄
幼稚園の先生の花子に水沢有美
スキンヘッドの幼稚園児のモン太に堀絢子
まこと虫に肝付兼太
彼氏の新田と別れるも元鞘で結婚することになった大山友子に岡本茉莉
工事現場のおばさんに青木和代
近所のハゲ眼鏡のおじさんにたてかべ和也

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野川新栄

2.0 色彩だけが良い

2022年10月30日
iPhoneアプリから投稿

内容は本当に凡庸。テレビアニメを4話ぶんほど連結しただけの代物で、映画的な厚みや広がりはまったくない。ギャグに関しても不条理というよりは単に原始的なものばかりで笑うに笑えない。ただ背景色彩のセンスだけは突出している。サイケデリックだがどこか落ち着きのある、それゆえにむしろ狂気に磨きのかかった独特の彩色が凡庸な中身をうまいこと糊塗してくれていた。思えばシャフトの過度に記号化された背景色彩の源流もひょっとしたらここにあるのかもしれない。そこへ岡本喜八『ジャズ大名』の終盤に出てくるピクトグラム演出が合流すれば『ぱにぽにだっしゅ!』や『化物語』の不可思議な映像世界の完成というわけだ。

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因果

1.5 当時はとんだカップルと同時上映だった

2019年12月9日
Androidアプリから投稿

内容はマンガ原作以上でも以下でもなかった。
公開時はまだTVアニメ化もされてなかったと記憶している。
沢田家のまことちゃんをストレートに表現したものの、過度の下品さは抑えられており、アニメ映画化した事でマンガの独特の表現も薄まって、毒にも薬にもならないものだった。
背景だけが妙に凝っていたような気がする。

作品に出てくるビチグソカップとか売ってたが、マグカップの底部分にとぐろを巻いたウ◯チがくっついており、洗う際には大変邪魔な逸品だった。

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うにたん♪(DCPにも抜け穴あるんだ)