「あおい輝彦が一人二役だと初めて知る喜び」犬神家の一族(1976) 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
あおい輝彦が一人二役だと初めて知る喜び
言わずと知れた日本を代表する名探偵である「金田一耕助」。この名探偵を演じた俳優は数多あれど、石坂浩二をしてその第一人者と認めるファンが最も多いのではないでしょうか。名匠・市川崑監督、そして石坂浩二を配した本シリーズは全部で5作創られることになりましたが、その記念すべき第一作目となったのがこの「犬神家の一族」であり、本作のインパクトは半世紀を経ても全く色褪せることがないところが凄いところです。
それが証拠に、2023年にはNHKがドラマ化してましたし(主演は吉岡秀隆)、また本作の影響が色濃く見て取れる映画も散見され、私が観ただけでも「ミステリと言う勿れ(2023年)」、「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年)」、「変な家(2024年)」などがありました。シャーロック・ホームズ物が、パスティーシュも含めて今でも創られるのと同様、金田一物も尽きることなく陸続と創られており、ファンにとっては嬉しい限りです。
そんな本作ですが、個人的にテレビやビデオなどでは10回以上観ていたものの、劇場で観たことがありませんでした。それが今回、丸の内TOEIで開催中の『昭和100年映画祭 あの感動をもう一度』で上映されるということで、観に行った次第です。何度も見返している作品なので、何がどうなるということはあらかた分かっているものの、やはり何度観ても面白く、また大画面で名場面を観る感動に打ち震えました(ちょっと大袈裟か)。
そして今回観た感想としては、まずは主犯である高峰三枝子の演技が非常に絶妙であるということに気付きました。母の違う姉妹たちへの対抗心、息子への愛情、父・犬神佐兵衛翁に憑りつかれたように殺人を犯す狂気などなど、場面場面での感情表現が完璧で、こうした演技の安定感が、本作を半世紀近い後世に至るまで名を高からしめている原因なんだと思わざるを得ませんでした。
また、同じ『昭和100年映画祭 あの感動をもう一度』で観た「砂の器」同様、島田陽子が重要な役どころで登場していたのも見逃せませんでした。「砂の器」公開時に21歳、本作の公開時に23歳だった彼女の可憐なことといったら!さらには島田陽子とは対照的に、やや三枚目的な役柄を演じた坂口良子も、実に可愛かった。まさに眼福!
あと今回改めて知ったのは、青沼静馬もあおい輝彦が演じていたということ。こんな基本的なことに気付かなかったとは、私の眼が節穴であることは間違いないようです・・・いずれにしても、今まで知らなかったことが、今回の劇場鑑賞をきっかけに知れたことは、僥倖でした。
そんな訳で、本作の評価は★4.8とします。