巨人ゴーレム(1936)
解説
ジュリアン・デュヴィヴィエが、「地の果てを行く」に次いで、「我等の仲間」の前に、プラーグのABフィルムで製作した映画で、プラーグの古い伝説とヴォーコヴェク及びウェリクの物語とに基づいている。脚本は「巴里の唄」のシナリオに協力したアンドレ・ポール・アントワーヌが、デュヴィヴィエと共作した。主役は「楽聖ベートーヴェン」「罪と罰(1935)」のアリ・ボールで、「巴里-伯林」のジェルメーヌ・オーセエ、「幻影」のロジェ・カール、その他、「我等の仲間」のシャルル・ドラ、同じくレイモン・エーモス、「隊長ブーリバ」のロジェ・デュシェーヌ、「モンパルナスの夜」のガストン・ジャッケ、「楽聖ベートーヴェン」のジャニー・オルト、巨人俳優フェルディナンド・ハルト、等が助演している。キャメラはチェッコの古参のヴァクラフ・ヴィッヒと「ながれ」「春の調べ」のヤン・スタルリックとが協力して担任。
1936年製作/87分/チェコスロバキア
原題または英題:Le Golem
ストーリー
中世紀のプラーグ。ボヘミヤの王ロドルフ二世治下のプラーグは中欧に於ける最も奇怪と豪奢とを極めていた都であった。半ば芸術家で、半ば夢想家のロドルフ王は、この都に世界より珍しい芸術品を集め、また占星術師、錬金術師、その他の人達を招き、プラーグの都は一種神秘の雰囲気に包まれていた。しかし、ロドルフ王は狂人でもあった。彼は人々を信ぜず、脅迫感におびえ、時として惨忍と肉慾に身を投げ込むこともあるが、その後で忽ち孤独と不安とに自らおののくのであった。このロドルフ王は宰相ラングの手中にあっては玩具同然であった。政治はラングが切り廻していた。しかし、この時、ユダヤの民は圧政の下に、貪欲と飢餓に泣き、悪疫は流行していた。このユダヤの民の最後の希望は教会の一隅にあるゴーレムにかけられていた。ゴーレムは一五六〇年、プラーグの大僧正レヴが創った巨像である。しかし、レヴは生前、ゴーレムに救いを求めるのは秘密の合図、即ち猛獣の咆哮する時にのみ限ると戒めたのである。占星者達は、やがてこのゴーレムがロドルフ王に叛き、命を奪うことを予言した。恐怖した王は宰相ラングに命じ、ラングは更に腹心の奉行フリードリヒをしてゴーレムを捕らえさせようとした。しかし、巨像に威圧された追手どもは逃げ帰る。ラングは今度は手を変え、レヴの弟子ジャコブを招き、彼を甘餌で誘うが、ジャコブはそれを拒む。ロドルフ王はジャコブを拷問にかけて、ゴーレムの秘密を自白させようと迫るが、ジャコブは遂に口を割らない。ジャコブの妻ラシェルは、この地に来たフラシスの宝石商トリニャックにすがり、王の寵姫ストラダ伯爵夫人を通じて、ジャコブを出獄させる。この間、ロドルフ王は伯爵夫人の邸に移されているゴーレムと、はからず行き合い、この沈黙の巨像に云い様のない恐怖を感ずる。宰相ラングの手は再び動き、ゴーレムに関係ある人々をことごとく獄に投じ、絞首台にかけることにした。そしてゴーレムも獄に入れ鉄鎖に繋いだ。だが、この時、獄中のラシェルは獅子の咆哮を聞き、ゴーレムの額に秘密の文字を書いた。忽ち生を得たゴーレムは、獄中から宮廷に踏み入り、あらゆるものを叩き破り、ラングを倒し、フリードリヒを踏み殺し、そしてゲットォの扉を押し破った。ユダヤの民は解放された。ジャコブは使命を果たしたゴーレムを再びもとの粘土に返した。この時にマティアス大公の軍勢はこのプラーグに迫り、ロドルフ退位の報が市内に伝えられた。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ジュリアン・デュビビエ
- 脚本
- アンドレ・ポール・アントワーヌ
- ジュリアン・デュビビエ
- 原作戯曲
- ジョージ・ボスコベク
- ヤン・ベリフ
- 撮影
- ヴァクラフ・ヴィッヒ
- ヤン・スタルリック
- 美術
- アンドレ・アンドレイエフ
- ステパン・コペツキー
- 音楽
- ヨセフ・クモク