情熱の友
劇場公開日:1950年4月11日
解説
「幸福なる種族」「大いなる遺産」のデイヴィッド・リーンが監督した一九四九年作品。脚本はスリラー作家エリック・アンブラーが、H・G・ウェルズの同名の小説に取材して執筆し、さらに監督リーンと「大いなる遺産」のスタンリー・ヘインズが手を入れたものである。撮影は「大いなる遺産」のガイ・グリーンが指揮し、美術監督も「大いなる遺産」のジョン・ブライアンである。音楽はリチャード・アディンセルの作曲で、製作はロナルド・ニームである。主演は「第七のヴェール」のアン・トッド、「愛憎の曲」のクロード・レインズ、「逢びき」「青の恐怖」のトレヴァー・ハワードで、映画初出演のイザベル・ディーン、ベティ・デイヴィス、アーサー・ハワード等が助演している。
1949年製作/イギリス
原題または英題:The Passionate Friends
配給:BCFC=NCC
劇場公開日:1950年4月11日
ストーリー
ロンドンでも屈指の銀行家ハワード・ジャステインの妻メエリイは、女は生活の安定のために結婚すべきで、結婚と恋愛とは別物であるべきだ、という考を少女時代から持っていた。それで十九の春、恋人のスチーヴン・ストラットンから求婚された時、拒絶して年のちがう銀行家と愛なき結婚をしたのであった。スチーヴンは発憤して勉学にいそしみ、青年科学者として嘱望されるようになった。愛人と別れて五年目には純真な乙女パットと婚約の仲であったが、ゆくりなくも大晦日の舞踏会でメエリイと再会した。そして再び二人の間には愛の焔が燃え上り、口実を設けては会う機会を作った。ハワードはスチーヴンに絶縁を要求したが、スチーヴンは彼女が誰を選ぶか、彼女自身に決めさせてくれと乞うた。ところがメエリイは再び愛よりも生活の安定を選んだ。それから九年、スチーヴンはパットと結婚し、二人の子の父となり、大学教授として科学界の重鎮となっていた。彼が全欧学術会議に出席すべくスイスに赴いたとき、湖畔のホテルでまたもメエリイとめぐり逢った。彼女は二日後に落合うという夫を待って、夫の女秘書レイトン嬢と二人で先着していたのである。メエリイは今もなお、スチーヴンに対する愛が消えていないことを自覚したが幸福な家庭の人である彼に、昔に変らぬ愛情を告白することは、さすがに出来なかった。二人は旧知の友として登山して清遊した。ところが仕事の都合でハワードは一日早く到着し、ホテルのテラスから、湖を渡ってきたモーター・ボートの二人を見て、顔色を変え、帳場でしらべると妻とステラットン教授の寝室は隣り合っていた。嫉妬に分別を失った彼はロンドンに帰ると離婚訴訟の準備をした。巨額の慰藉料を請求してスチーヴンを破産させ、併せて大学教授としての地位を失わせようという考であった。スイスのホテルのことは何もかも偶然で、何のやましい点もないと、メエリイは誓ったが、夫は冷笑するだけだった。メエリイはさらに、背中を向けている夫の後姿に、自らの潔白を訴え、あらぬ疑いを晴らしてくれと嘆願した。夫が背を向けたまま、身動きもしないので、メエリイは家を走り出た。そして近くの地下鉄のプラットフォームで、身を投げようとした。その瞬間彼女は肩をつかまれて引戻された。背中に向かって潔白を誓った妻の叫びが真実であったこと、どんなことが有ろうとも自分がメエリイを愛していることを痛感してハワードは妻を抱きとめたのであった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- デビッド・リーン
- 脚本
- エリック・アンブラー
- 脚色
- デビッド・リーン
- スタンリー・ヘインズ
- 原作
- H・G・ウェルズ
- 製作
- ロナルド・ニーム
- 撮影
- ガイ・グリーン
- 美術
- ジョン・ブライアン
- 音楽
- リチャード・アディンセル
- 指揮
- ミュア・マシースン
受賞歴
第3回 カンヌ国際映画祭(1949年)
出品
出品作品 | デビッド・リーン |
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