白き処女地

解説

1934年度のフランスのシネマ大賞を獲得した名作で、「にんじん」「モンパルナスの夜」「商船テナシチー」に告ぐジュリアン・デュヴィヴィエの作品。ルイ・エモンの名作小説をデュヴィヴィエ自身脚色して、台詞にガブリエル・ボアシー、撮影に「乙女の湖」「夢見る唇」のジュール・クリュージェの協力を得て映画化したもの。主役はコメディー・フランセーズ座付きで「母の手」主演のマドレーヌ・ルノーと「はだかの女王」のジャン・ギャバンとが勤め、これを助けて舞台の老名優シュザンヌ・デュプレ、コメディー・フランセーズ座附きのアンドレ・バッケ、「モンパルナスの夜」「沐浴」のアレクサンドル・リニョオ、「乙女の湖」のジャン・ピエール・オーモン、「居酒屋(1933)」「モスコウの一夜」のダニエル・マンダイユ等の腕利きが共演する外、「巴里祭」のトミー・ブールデル、ル・ヴィギャン、「母の手」のヴァン・ダエル、子役のギャビー・トリケ、カナダの俳優たるフレッド・バリーとジャック・ランジュヴァン等が助演している。音楽は「商船テナシチー」「ジャンヌ」と同じくジャン・ヴィーネがロジェ・デゾルミエールの協力を得て担任した。

1934年製作/フランス
原題または英題:The Nakid Heart/Maria Chapdelaine

ストーリー

カナダの一番北の外れにある教区ペリボンカ。ここにはフランスから移住して来た人々の子孫が、祖先の古い伝統と習慣と、宗教と言語と音楽とを守り続けて生活している。が、そこから又離れた森の際に、小屋を構えてシャプドレーヌ一家が住んでいる。父親のサミュエルは開墾者の魂を持ち、一つの土地を作るとすぐ次の未開の地を開拓して行き遂にこのへんぴな荒れ地へも来てしまった。けれども、母親のローラはそれに苦情一つ云うでもなく、胸に娘時代の賑やかだった想い出を残しながら、夫に従って此の荒野へ来ていた。長男のエスドラは冬になると山に木を伐りに行き夏になると帰って次男のティ・ベと共に父親を助けて土地を作り、娘のマリヤは母親と共に働く男達の世話をした。そうした生活の或る春、マリヤが父親と久振りでペリポンカの村に出た時、数年振りでフランソワ・パラディに逢った。フランソワは猟師で、毛皮商人の案内者で森に生きる男であった。逢った二人は無言の内に心を動かした。ジャブドレーヌの小屋から少々離れた小屋にユートロープ・ギャニョンという素朴な男が住んでいた。彼は内気にマリヤも恋していた。聖アンヌの祭の頃、シャブドレーヌの小屋を訪れて来た人の中に都の青年ロランゾ・シュルプルナンがいたが、彼も亦マリヤに恋した。だが、祭の日のブルエ摘みの夕暮れ、マリヤが厳かに口には出さねど互いに未来を約したのはフランソワであった。そしてフランソワは来春また来ると云って夏場の仕事に去って行った。夏、秋、冬途過ぎてカナダの地に厳しい冬が来た。春を待ちきれなくなってフランソワは山から降りて雪の山野をペリボンカへと辿った。だがクリスマスの前夜に彼は西北風に襲われた。雪に振りこめられたシャブドレーヌの一家は教会に行けぬ淋しさの中にも清い祈りを捧げた。そしてマリヤは神に彼が春来ることを願って千遍のアヴェ・マリヤを誦した。だが元旦の朝、知らされたのはフランソワが道に迷っての死であった。両親は黙ってフランソワに歌つきの三つのミサを捧げてくれ、司祭は彼女に祈れと教えた。だが、この時ロランゾがまた来て都の生活の楽しさと安らかさを語り、彼女に結婚を申し込んだ時、マリヤの心に動揺が来た。それを見たユートローブの顔が侘びしげだった。だが、この時に母親のローラが死んだ。この辛抱強くよく働く健気な女は、娘時代の楽しい夕べの集まりを幻想に浮かべながら死んだのである。この母の死はマリヤの心を打った。そして教会で司祭がケベックに住む人々のこれ迄の生活と掟とを語った時、マリヤの心は決した。ケベックの地では何物も変わるべきではなく、何者も死ぬべきではないのだ。そしてロランゾは心を残しつつ都に一人で帰って行った。マリヤはユートローブに来年の春、人々が種蒔きに山から降りて来た時に結婚しましょうと答えた。

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