予審

解説

刑事弁護士マックス・アルスバーグとオットー・ヘッセ合作の舞台劇から「嘆きの天使」「悪魔の寵児」のロベルト・リープマンが脚色し、新人ロバート・シオドマクがエリッヒ・ポマー指揮のもとに監督したもので出演者は「最後の歌」「不滅の放浪者」のグスタフ・フレーリッヒ、「ファウスト」「愛の犠牲」のハンス・ブラウゼウェッター、「ファラオの恋」のアルバート・バッサーマンを始めシャーロッテ・アンダー、アンニー・アルカアト、エディット・マインハルトなど。撮影は「月世界の女」のコンスタンチン・チェットが担任。

1930年製作/ドイツ
原題または英題:Die Voruntersuchung

ストーリー

停車場に近い、急行列車の通るたびにがたがた揺れる古アパート。そこには何カ所か毛色の変わった、そして世の中からおいてきぼりを喰った人々が住んでいる。蝶番のゆるんだドアの入り口には汚れた名詞が張り出してある。『エルナ・カビッシ。語学教授。日曜にも教授す』その隣が『メラ・ヅィエール。美爪術師』そしてこの二人の女の所には見知らぬ顔の男達がアパートの人達に疑い深そうな視線を投げつけられてはコソコソと通って来るのである。今日も二人の所には客があるらしく男女の声がもつれていたがエルナの部屋ではそれが次第に甲高く尖って来た。『そう。それであなたは今日私にさよならを言いに来たと言うわけなのね、今まで3年間も貢いできた私に、よくもそんな不義理が言えたもんね。』エルナの声は突き刺すように鋭い。男のそれに答える低い声。聞き取れない女の罵り声。椅子の倒れる音。瀬戸物の砕ける音。そして男はネクタイを引きちぎって部屋から飛び出して行った。男は大学生でベルントと言った。女とはふとしたきっかけで関わり合った腐れ縁であった。その後、学友で土地の検事の息子であるウォルターという男と親しくなってその妹を知った。二人は恋をした。その結果が今日のいきさつである。ベルントは下宿中の人に顔を見られて腹立たしさと極まりの悪さでごっちゃになった感情を抱いて外へ出た。ウォルターは友達の気持ちも妹の気持ちもよく知っている。二人を幸福にしてやるために彼はベルントの女に手を切らせる役目を引き受けた。ウォルターはベルントの手から女の部屋の鍵を受け取った。そして結果を報告するために後刻停車場でベルントと落ち合う手筈を決めた。ベルントは約束の時間に停車場に来て彼を待った。が、いくら待っても来ない。失望と不審とを抱いて自分の部屋に帰って来るとそこに彼を待っていたのは数名の警官であっった。エルナが惨殺されたのだ。嫌疑が彼に掛かったのは当然な話だ。しかし彼はこの事件には全然預かり知らないのである。現に喧嘩別れをしてきてから彼女の部屋の鍵はウォルターに渡してある。自分の身を潔白にするためにはこのことを言い立てさえすればいいのだ。けれどこれは言えることではない。自分のために女に会いに行ってくれた友達。そして、ウォルターがその犯人でないと誰が言えよう。ベルントは口をつぐんだまま検事局に、ウォルターの父の前に送られた。予審。厳かに畳み掛ける質問が老検事の口をついて出る。鋭い検事の質問は常に急所をついている。鍵の行方である。持っていないとベルントは言う。では誰にそれを渡したと検事は追求する。ここまで来るとベルントは口をとじてしまはなくてはならないのである。証人が次々に呼び出される。女に罵られて出て行ったベルントを胡散臭そうに眺めた下宿屋の人々。彼に勝ち目はない。その時、鍵の所有者という男が検事の前に呼び出された。勿論ウォルターである。老検事にとってたった一人の息子、だが取り調べは検事の職務である。青ざめた顔ににじむ苦しみの汗をじっと忍んで老検事は予審をすすめた。どこにも救いはない。自白こそしないけれど犯人は自分の息子と断定するより他はない。が、その時意外な犯人が現れた。全く予期しない犯人が、自分の息子も、そして息子の友達も真犯人でなかったことが明らかになったとき、老検事は恐ろしさに慄えた。自分が今まで正義と信じ真犯人と信じて罪を興えて来た昔の幾人がこうした無実の嫌疑者であったろう。その時検事は兄を案じて電話をかけてよこした娘にベルントが『ゲルグ』と呼びすてに話しているのを聞いた。彼の予審の前にもう一つの悲劇が醸されようとしているのを知った老検事は再び慄然とした。

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