モンブランの嵐

解説

「死の銀嶺」「マッターホン」につづいて製作されたアーノルド・ファンク氏の作品で脚色及び監督は同氏自ら当り、キャメラは「死の銀嶺」と同じくハンス・シュネーベルガー、リヒャルト・アングスト、ゼップ・アルガイヤーの三氏が受持っている。主なる出演者は「聖山」「死の銀嶺」のレニ・リーフェンシュタール嬢、飛行家として「死の銀嶺」に出たエルンスト・ウーデット氏、ゼップ・リスト氏、「マッターホン」のエルンスト・ペーターセン氏等。

1930年製作/ドイツ
原題または英題:Avalanche Sturme Uber dem Montblanc

ストーリー

アルプス連山の中でも山容の美しさを持って音に高いモンブランの峻嶺に観測所がある。そこには一人の若い観測者が寂寥の中に寒気と戦いながら観測を続けていた。或時ヘラという美しい女天文学者が父親と共に飛行機で飛来し、此の観測所に滞在した。同じ学問の使途である二人はやがてお互いに愛を感じ始めた。ところが或日のことヘラの父親は断崖から足を踏み辷らして千仞の谷底に墜ちて惨死した。父の死は悲しめるヘラをして山に決別せしめた。ヘラは折しも休暇の時に来た恋人の観測者にともに下山をすすめたが、彼は恋よりも星により大なる関心を払うことを自己の職分であると信じ、恋はやがて忘れて了うことが出来ると思って山上にとどまった。ヘラは故郷に帰った後望遠鏡に眸を凝らすにつけて山の観測者のことを思った。そして春。モンブランの峻嶺にも暖かい陽光が照り映えた。観測者の許には女文字の手紙が来た。しかし彼はなおヘラへの恋情を絶とうと考えた。嵐が襲って来た時、仕事に熱中していた観測者は一瞬の不注意のため手袋を嵐に取られて了った。吹雪にとじこめられた家の中で彼は両手の凍傷を防ぐ術がなかった。しかし幸いなことに無電があった。彼は一縷の望みをここに見出してSOSを打った。ヴァレリアン山にあるヘラは救助信号を聞いた。ヘラは救助に赴いた。彼女の懇願を受けた知合いの飛行家は嵐を衝いてモンブランへ飛んだ。そして危険な飛行を続けて漸く氷原に着陸した。観測者は恋人によって救われた。彼はかくて人の世の幸福を知った。

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