新しき土
劇場公開日 2012年4月7日
解説
「青い山脈」「東京物語」などで知られ、日本映画の黄金時代に活躍した伝説の女優・原節子が、デビュー間もない16歳のときに主演した映画。1937年に製作された日本初の国際合作映画で、山岳映画で知られるドイツの巨匠アーノルド・ファンクと伊丹万作の共同監督による日独合作ドラマ。欧州留学を終えドイツ人女性ジャーナリストとともに帰国した輝雄(小杉勇)は、一途に待ちわびていた許婚の光子(原)と父・巌(早川雪洲)に温かく迎えられる。しかし、西洋文化になじんだ輝雄は、許婚という日本的な慣習に反発を覚え悩む。輝雄の変化に気づき絶望した光子は、花嫁衣裳を胸に抱き、噴煙をあげる険しい山にひとりで登り始める……。日独版(ファンクが責任監督・編集)と日英版(伊丹が責任監督・編集)の2本の異なるフィルムが存在するが、公開後は日独版がスタンダードとみなされるようになった。2012年、75年ぶりに劇場公開。
1937年製作/106分/日本・ドイツ合作
配給:T&Kテレフィルム
日本初公開:1937年2月4日
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2021年6月16日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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1.日独合作で撮影したので、地理的におかしいのが面白い
①12分=光子の自宅(富士山の麓)の裏が、広島県の厳島神社
②18分=輝夫とゲルダが夜の東京観光で、阪神電車の駅、他
2.ドイツ人の視点での撮影の為だと思うが、日本の景色・風習・文化の映像が多数
①20分=光子の回想で、体操、料理、水泳、弓道、裁縫、茶道、箏、剣道、
薙刀、華道、ピアノ、等
②42分=大相撲+横綱の土俵入り、芸者、歌舞伎、等
③64分=ゲルダの箸使いが面白い
④101分=棚田での田植え、田んぼの代かき、その他の農作業、等
3.1937年と初期の映画なので、特撮みたいな映像
①80~97分=光子が着物姿で噴煙の岩山を登山 → 無理筋
②同上=輝夫も光子を追いかけて、洋服姿で泳いで池を渡ったり、
靴下姿で、噴煙の岩山を登山 → 無理筋
4.ドイツ人に対する日本の紹介、及び、観光映像の要素が2~3割ある感じ
①地震・火山・海岸・桜・祭り・神社仏閣の説明みたいな映像
②日本の家族制度に対する考え方の紹介、等
③政府広報の民間版みたいな要素
5.映画を観て、これは無理筋だなと思う所が多々あって面白い
①原節子(1920.6.17生)16歳時の撮影 → 若い
②感動等は無いが、1937年頃の映像が沢山観れて良かった
6.数分の短い映像は別として、自分が観た国内映画では1番古い映画でした
なお、外国版を含めると、チャップリン作品集:1914年製が
自分が観た映画では、1番古い映画です
7.この映画は、視点が違うのが面白くて良かったです
・これぞ初々しいと言うのにふさわしい原節子
・足が痛くなる
2016年1月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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洋行帰りの日本の若者が、紆余曲折を経て、養家の娘と結婚して満州の農業振興に身を捧げる姿を描く。
その言説は、「せっかく手つかずの広大な土地があるのだから、優秀な日本人がかの地の農業を振興して、人口食糧問題を解決しよう。」というもの。
明るく、前向きな発想として表現されているこのフィルムを、当時の人々がどのように受け止めたのかは、容易に想像することができる。日本のためばかりか、匪賊の襲撃を恐れながら細々と暮らす満蒙の人々のためにもなると、当時の日本人が本気で考えていたとしても不思議ではない。そのようなことを思わせるラストシーンであった。
原節子の日本人離れした美貌は、確かにドイツ人監督の心を掴んだであろう。前年に出演した「河内山宗俊」のフィルムがかろうじて残っているが、保存状態が良くないため彼女の容姿をはっきりと観ることができない。この「新しき土」はBDでの上映だったが、おかげで原の姿をくっきりと確認することができた。
後年の小津安二郎の作品に出ている原節子の姿をして、我々観客は彼女を「日本的美しさ」を体現した女優であるかのように評するきらいがある。
だがしかし、当時の日本人女性としてはグラマラスな体型も含めて、その女性らしさは日本のものとはかけ離れたものである。
当時の観客が、満蒙開拓に平和で健康的な夢を抱いたのと同様、我々もまた、原節子という女優のイメージについて、「日本的」なる称号を勝手に与えているのだ。
ついでに言えば、戦後の小津の作品群に描かれる家族に「日本的」なイメージを付与しているのもまた戦後の観客なのだ。洋服を着て帽子をかぶり、電車に乗って会社に行く人々は昭和30年代でもごく一部の都会のエリート層であり、この時代の人口の大半は地方で農業に従事し、電気やガスのない家屋での生活がまだ一般的であった。
ごく限られた者の持つ特殊な属性が、あたかもある社会の一般的な姿、ある社会に広く認められる特徴であるかのように語られることが、たびたび起きていることなのだということを、この映画によってしっかりと確認することができた。
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