メトロポリス(1926)

解説

「ドクトル・マブゼ」「ジーグフリード」「クリームヒルトの復讐」に次ぐフリッツ・ランク氏の監督作品で、同氏の令閨テア・フォン・ハルボウ夫人が自身原作の小説から前三作品と同じく脚色の筆を執ったものである。映画初出演のブリギッテ・ヘルム嬢(後に「懐かしの巴里」に出演)と本邦初お目見得のグスタフ・フレーリッヒ氏とが主役として活躍するほか、「ドクトル・マブゼ」「焔の裡の女」のアルフレッド・アベル氏、「クリームヒルトの復讐」「化石騎士」のルドルフ・クライン・ロッゲ氏、「ジーグフリード」のテオドル・ロース氏、「ドクトル・マブゼ」のハインリヒ・ゲオルゲ氏、等も出演している。撮影者は「最後の人」「ヴァリエテ(1925)」のカール・フロイント氏と「ジーグフリード」「クリームヒルトの復讐」のギュンター・リッタウ氏とである。但し我国に輸入されたこの「メトロポリス」は、アメリカ版であって、チャニング・ポロック氏によって改修短縮されたものである事を付記して置く。(無声)

1926年製作/104分/ドイツ
原題または英題:Metropolis

あらすじ

これは物質文明の精華、都会メトロポリスの物語である。そこでは科学と発明と機械とが偉大なる発達を示している。それは脳と手とからなっている都会。地上の資本家の楽園と地下の労働者の地獄との此の二つから成り立っている都会。この都会を動かすものはその支配者ジョン・マスターマンの頭である。彼は一切を機械の力によって処理した。従って彼の下に働く人間はただ機械のように動いていたのである。地下深くには労働者の住居する町があり、その上層には、このメトロポリスを動かす総ての力を生む機械の世界があり、更にその上層には、富める苦労知らぬ人々の楽しむ永遠の園があった。それはジョン・マスターマンの息子エリックが此の園で多くの美しい女達を相手として遊び戯れていた時であった。地下に住む女メエリーが多くの汚い子供達をひきつれてこの園に姿を現したのであった。エリックはメエリーが「子供達、御覧、あれはお前達の兄弟なのですよ」と子供達にいう声を聞いた。この声に目覚めたエリックは地下の労働町に降りて行ってそこで労働に従事した。彼は恋するメエリーに励まされて、地下に働く人々と父親との間の調停者となろうとした。が、この時、父親マスターマンは大発明家ロートワングに命じて疲れを知らぬ人造人間を作らせた。ロートワングはメエリーを捕らえ、彼女を模型としてメエリーそのままの人造人間を作った。この偽のメエリーは地下に降りて行き、本物のメエリーに代わって労働者達に道を説くのであった。が、この偽のメエリーはマスターマン等の意に反し、却って労働者達を煽動し機械に反抗した。かくて地下から地上へかけてと熱狂した労働者の一群は押し寄せた。そして総ての機械は破壊された。が、狂った労働者達は機械を破壊する事が地下の己等の住む町を水で漲らす事である事に気が付かなかった。程経てそれに気が付いた彼等は憤激の余り煽動者である偽のメエリーを捕まえて火で焼き殺した。が、彼等が地下に残して来た子供等はエリックとメエリーによって救われていた。ロートワングは労働者等の暴動を見、偽のメエリーを作った事によって禍がその身に迫る事を恐れ、本物のメエリーを無きものにしてその事実を紛らわそうとしてメエリーに迫って行った。メエリーが危うかった時、エリックはその救助に赴き、屋上の激しい格闘の後、ロートワングは転び落ちてその命を失った。マスターマンの頑な心もこの大事変によって目覚め、エリックとメエリーとの計らいによって、労働者と握手する事になった。やがては愛を基調とした此の両者の提携によって第二のメトロポリスが新しい建てられる事であろう。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.5すごっ!

2025年6月12日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

活弁士:無声映画時代に画面の説明を職業とした人。
活弁士って『活動映画弁士』ってことだったのか。
そんな活弁付き上映回に参加。上映前に説明して頂いたメトロポリスの変遷について備忘のために記録👇️(記憶違いはご勘弁🙏)

もともと1927年に製作されたリアルオリジナルは150分。
でも当時の政治情勢から社会主義的な色合いの強さを懸念し様々な描写がカットされ、公開された時には100分程度に。
その後、この映画大好きマン(ミュージシャン)の、ジョルジオ・モロダー氏が音楽を入れたサウンド版(120分)を作ったのが1980年代。。当初映画勢はミュージシャンの作る映画なんてー(どぉせしょーもない)と小馬鹿にしていたけど、実際に観てみると、これまで観たことのないカットがいっぱい。それもそのはず。製作のためにこの映画のフィルム持ってない??と(趣味の範囲で)探したところ出てきたものを繋ぎ合わせ、『未公開シーン』が20分加わったそう。
そこで火が付いたのが映画勢。『この映画にはまだ観たことのないシーンがあるはずだ!!』と本気になって世界中を探したところ、非常にオリジナルに近いと考えられる145分版がアルゼンチンで見つかったのが2008年。ただし、16mmサイズフィルムのため、既存の映像と比べて画質解像度が落ちるのはいたしかたないが長さは当初オリジナル版から5分程度しか欠けていないためこれ以上のものはもう出ないだろう、という意味での『完全復元版』だそぉな。今後、デジタル・リマスター処理なんかが施され、全体を通して綺麗に見られる日が来ることを期待して💜

さて、本編について。←前置き長い
前置きいっぱい書いたからシンプルに箇条書き。
・1920年代の想像力と技術力の高さに脱帽!
・知識階級の集うクラブはバビロンの空中庭園を連想させる
・いわゆる“ロボット”が映画に初登場した作品らしい
・その時代からマッドサイエンティストがいるのはニンマリ
・マリアが地下で大きなレバーを引く姿はドラクロワの「民衆を導く自由の女神」を想起させる
・100年経っても人って変わらない←これぞ本質ってことか

みんな仲良くしようよ。LOVE&PEACE✌

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らまんば

4.5驚異としか言いようのない作品

2025年6月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

斬新

 2時間半、弁士付き上映。
 世界大戦敗北後10年たってないのに、よくこれだけの映画がつくれたことに驚きと賞賛です。特撮技術なんてろくに無かったでしょう。高層ビルなんて一見してスカスカのハリボテとわかります。しかし、それはかえって物語を引き立たせていたとも言えます。歌舞伎の背景が「書き割り」なのが、観客の視線を役者に集中させるように。それでも、アリのように小さな自動車がたくさん動いている遠景などどうやって撮影したのかわからないようなのもありました。
 未来世界で毎日遊んで暮らせる上級国民と、まさにアリのように働かされる下級国民。労働者が皆まっくろに汚れた服を着て、集団で移動する。首うなだれ、ロボットのように歩く。生きることに何の希望も楽しみも無いようすが重々しく伝わってくる。そこここに演出・演技の秀逸さがひかります。クライマックスの大破局、何百人もの人が暴動に走り、また何百人の子供が大洪水の中を逃げまどう。それこそCGではないナマの迫力と実の演技に圧倒されます。
 主演のブリギッテ・ヘルムは、清純な乙女マリアと、邪悪な人造人間マリアの両方をよく演じ分けていました。意外なところに日本がでてきた。「ヨシワラ」が大歓楽街とヨーロッパにまで鳴り響いていたというのもオドロキ。
 ひとつ難は、2時間半やっぱり長かった。くどくどしいシーンがしばしばあったと思う。
 第二次大戦はこの12年後、出演していた少年たちの多くが戦場で命を落とし、ほかの人々も戦災で塗炭の苦しみを味わったであろうと思うと、本作にはまた考えさせられるところがあります。

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H・H

5.0強烈・絵画的なビジュアルと映画の教科書

2025年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

SF的な、そして絵画的なショットの教科書
音の無い映画のひとつの結論なのだろうと、よくは分からないが推察する。

無声映画故なのか、演技が文字通り芝居がかっていたが、それもまた味だろう。

映画とは西洋的なモノであり、野蛮なモノでもある。
非ヨーロッパ文化圏の映画とは何なのかといった気持ちになった。

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たいが

5.0衝撃の一大スペクタクル

2025年1月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

怖い

興奮

150分版を鑑賞。約100年前の作品ですが、そのメッセージの普遍性と壮大なスケールに驚かされました。

序盤から巨大なセットが登場。労働者達が巨大な機械を相手にエンヤコラと作業に従事する姿が描かれるのですが、この時点で「本当に100年前の作品なのか…?」と、かなりの衝撃を受けます。そして未来都市「メトロポリス」の構造が凄い!圧倒的スケールと美しさ。後のSF作品の多くに影響を与えたのは間違いないでしょう。100年前といえば、江戸川乱歩が「鏡地獄」や「人間椅子」などの短編を書いていた時代。信じられん。(比較対象が解りづれぇ…)

エキストラの数も異常に多いです。最も多いシーンで約1500人。予定では6000人でしたが、予算の問題で減らさざるを得なかったらしいです。しかし、特殊な映像技術により予定数通りのエキストラを再現したとか。観ながら、とんでもない費用をつぎ込んでんだろうな…と、製作会社を心配するレベル。あ、実際倒産したらしいですね、この映画のせいで。

ストーリーは格差社会、労働問題、機械との共存といった感じで分かりやすかったです。さらに、ラブストーリーが組み込まれ、よりロマンチックな印象を残します。アンドロイドやAIの暴走など、現代においても扱われているテーマを既にやっております。

そして音楽がまた素晴らしい!この壮大な作品に相応しいオーケストラによる演奏が、各場面を盛り上げ、よりドラマチックに演出しております。独特なセンスの舞台セットや衣装等と相まって、ミュージックビデオを観ているかのような錯覚に陥りました。無音声映画だからってのもありますけどね。

なんか今までの常識をひっくり返された感じです。100年前に既にこんなことを…というのもありますが、こんな世界観の映画があったんだなぁと、倒産する程のお金つぎ込んで作られたわけわからんくらい壮大なSF映画があったんだなぁと…。これがオールタイムベスト1200に入ってないの!?ドット・コムさん…嘘でしょ…?

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吹雪まんじゅう