「悲しくも生きる希望を感じられる作品」道(1954) どすこいたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
悲しくも生きる希望を感じられる作品
1954年製作。価値観は時代と共に移り変わっていきますが、この作品で描かれる「孤独」は普遍的なものであり、現代を生きる人にも訴えるものがあります。
ジェルソミーナの孤独、ザンパノの孤独、そして綱渡りの青年の孤独。それぞれが違った孤独を抱え生きて、死んでいく。すごく重く苦しくなるような悲しいお話。しかし、ザンパノの孤独を知ったジェルソミーナには微かな希望が見えていたようでした。それは「愛情」なのか、単なる「同情」なのか、微妙なところですが、相手を理解することで「情」が湧くというのはすごくわかります。観客も後半はザンパノに対する見方が変わったと思います。
しかし、それでも全てを台無しにしてしまうザンパノは、きっと最後まで孤独を感じていたと思います。あまりに不器用で粗暴な性格故、周囲から理解されない苦しみを抱いていたのではないかと。終盤、ザンパノが芸を披露する場面がありますが、最後まで映されておらず、成功したのかが分かりません。どうやら脚本では失敗したことになっていたようです。しかしその後のザンパノが暴れまわっていたシーンが、失敗したことに対する苛立ちからではなく、ジェルソミーナの死に対して彼なりに思うところがあったからだと観客に印象付ける為だと思うと、このカットには納得、感心であります。
ジェルソミーナ、ザンパノ、綱渡りの青年の対比が演技によって強調されていて面白かったです。ジェルソミーナを演じたジュリエッタ・マシーナの表情による表現は本作の大きな魅力でもあります。無表情で乱暴なザンパノがより恐ろしく感じられました。
全体的に重い雰囲気が漂っていますが、綱渡りの青年(イルなんとかっていうらしいですが、作中で名前出てたかな?)の言葉やジェルソミーナの優しさには前向きなメッセージが感じられました。こんな私でも何かの役に立っている。そして、孤独を感じているのは自分だけではない。70年前の映画ですが、普遍的なメッセージに心打たれました。