海棠紅
劇場公開日:1957年3月9日
解説
去る一月、日本で客死した香港・新華影業公司社長の張善[王昆]が総指揮、連合映画のスタジオで完成した日中合作映画。監督の易文は、「佳人長恨」に続き、我が国に来て東宝と協同で「桜都艶跡」「何日君再来」の二作を完成している。撮影は東宝「哀愁の街に霧が降る」の栗林実、音楽は香港の姚敏。主な出演者は、松竹の「東京・香港--蜜月旅行」に出た李麗華、中国映画の俳優、監督として知られる王引。そのほか鐘情、馬力など。
1955年製作/89分/日本・香港合作
配給:東和
劇場公開日:1957年3月9日
ストーリー
二十年前、中国のある町に、表は貴金属商を営み、陰では宝石泥棒をはたらく馬三爺(王引)という男がいた。犯行の後に必ず紅い海棠の花を残してきたことから、人は彼を海棠紅と呼んで恐れたが、真相を知るのは妻の三[女乃女乃](李麗華)と、徒弟の韓だけ。三[女乃女乃]はまた芸妓上りで金遣いが荒く賭博が何より好きという女。やがて三[女乃女乃]は女の子を産んだが、ここに馬は将来を考え盗み一切を廃めることにした。ところが、馬の泥棒廃業で三[女乃女乃]は賭博の金に困り昔の情夫小周と密会を楽しむようになった。その上、彼女は知人の誕生祝の席上で他人の腕輪を盗み、帰宅して、これを知った馬に責められると娘を連れて逃走、警察に夫を密告した。馬は警察に捕る寸前、小周の家に妻を追い、小周を殺したが三[女乃女乃]は娘を置いて逃げ去った。馬は娘を抱いて警察の主任刑事で幼友達の劉大奎を訪れて一切を白状、娘を養女にと頼んで潔く獄に下った。十余年の歳月が流れ、劉家に貰われ馬の娘愛珠は美しい娘に成長した。一方、三[女乃女乃]は今は無頼漢金五爺と同棲、転落の一途をたどっていた。そのころ、獄中の馬は、訪れて来た徒弟の韓から、愛珠が家柄の御曹司・李伝宗と近く結婚すると聞き涙を流して喜んだ。ところが結婚準備に忙しい劉家に、意外にも三[女乃女乃]が現われ、娘を返せと迫った。劉の妻が拒絶すると法外な金を要求した。韓の報せで、これを知った馬は、親友の迷惑と、三[女乃女乃]の悪辣さを思い、脱獄して三[女乃女乃]のアパートへ非常線を突破、かけつけた。三[女乃女乃]はビルの屋上に追いつめられ自ら落下して死んだ。馬は再び劉のもとへ自首した。折しも翌日は愛珠の結婚式。劉の計いで馬は娘と一目会ったが、愛珠は、彼を実の父と知る筈もなかった。しかし結婚行進曲を後に馬は満足げに獄へ戻って行った。