コンクリートの中の男

劇場公開日:

解説

「無防備都市」のロッド・E・ガイガーとナット・A・ブロンステンが一九四九年に共同製作した小市民映画で、ピエトロ・ディ・ドナートの小説『コンクリートの中のキリスト』から、赤追放でハリウッドを追われたエドワード・ドミトリクが監督した。脚色ベン・バーズマン。撮影は「溪谷の騎士」のC・ペニントン・リチャーズ、音楽は「汽車を見送る男」のベンジャミン・フランケルの担当である。出演者は、ブロードウェイの俳優サム・ワナメーカー、イタリア女優レア・パドヴァーニ、「邪魔者は殺せ」のキャスリーン・ライアン、「地中海夫人」のチャールズ・ゴルドナー、「波止場の弾痕」のボナー・コリアーノ、ビル・シルヴェスターなどである。

1949年製作/120分/イギリス
原題または英題:Give Us This Day
配給:BCFC=NCC
劇場公開日:1954年8月7日

ストーリー

夜。ニューヨークの貧民街ブルックリンのあるアパートへ男が入って行く。部屋へ入ると彼の妻が“出て行って下さい”と叫んだ。部屋を出た男ジェレミオ(S・ワナメーカー)は、昔の愛人キャスリーン(キャスリーン・ライアン)の許を訪れ、今までの生活を語り出す。--青年ジェレミオは希望に燃える煉瓦工だった。彼はキャスリーンに求婚し断わられたが、仲間のルイジが持つアンヌンツィアータ(レア・パドヴァーニ)という少女の写真に心惹かれ、彼女と結婚したいといい切った。アンヌンツィアータは二人だけの家を一軒構えるという約束を信じてイタリアからはるばるニューヨークへやってきた。家を借りる余裕のないジェレミオは彼女には内緒で三日間だけ家を借りたが、それもまたたくうちにすぎ、事情を知って打萎れたアンヌンツィアータと一緒にブルックリンのアパートへ戻らねばならなかった。その日から、二人だけの家を求めて、労働と節約の日が開始された。しかし、やがて襲った世界的不況の波が彼らの生活をいためつけた。子供はつぎつぎと四人生れ、家族は増えたのに生活は逆におしつまり、家を買うための貯金もなしくずしに減っていった。そんなとき、昔の仲間が危険な建築の現場監督の口を持ちかけてきた。ジェレミオは悩んだ末、ついにその仕事をひきうけたが、そのためルイジなどの昔の親しい仲間とも対立するようになった。ルイジが安経費でごまかした足場から落ちて不具になった。自責の念に耐えられなくなったジェレミオは、次第に家から遠去かって心のうさを古い愛人キャスリーンの許ではらすようになり、妻や子が待つ彼の誕生日にも帰宅がおくれ、妻に泪ながらの愛想づかしをされたのだった--。キャスリーンに語りおえたジェレミオは、再び家へ戻って妻に許しを乞うた。そして、翌日、仕事の仲間にも建築工事の内情を話して諒解を得、新しい意気ごみで工事をつづけることにした。昔の仲間との友情もとりもどされた。そしてジェレミオが漸く明るい気持になれたとき、突然崩れおちた古壁が彼をコンクリート流しこみの枠の中へ叩きこみ、上から流れおちるコンクリートを防ぐすべもなく生埋めになってしまった。

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