流れ者
劇場公開日:1971年3月12日
解説
“Voyou”とは賎しく教養のない連中という意味の仏俗語であるが、これは法の裏表を熟知した元弁護士が、誘拐、脱獄の犯罪を粋にやってのけるルルーシュ版フィルム・ノワール。製作は「あの愛をふたたび」のアレキサンドル・ムヌーシュキン、監督も同作のクロード・ルルーシュ、脚本もルルーシュと「愛と死と」や同作等のコンビ、ピエール・ユイッテルヘーヴェン、それにクロード・ピノトー等の共作。撮影をジャン・コロン、音楽は「雨の訪問者」「ある愛の詩」のフランシス・レイ、編集をマリー・クロード・ラカンブル等が各々担当。出演は「Z」のジャン・ルイ・トランティニャン、ルルーシュ夫人で映画初出演のクリスティーヌ・ルルーシュ、「ダイヤモンドに手を出すな」等の監督シャルル・ジェラール、「殺意の瞬間」(1956)のダニエル・ドロルム、ドロルムの夫君で「わんぱく戦争」の監督イヴ・ロベール、「Z」のシャルル・デネール、「女と女と女たち」のジュディット・マーグルなど素人、俳優が入り乱れて出演。
1970年製作/フランス
原題または英題:Le Voyou
配給:ユナイト
劇場公開日:1971年3月12日
ストーリー
その夜、下級銀行員のガロワ(シャルル・デネール)氏と妻(ジュディット・マーグル)、五歳の息子の三人の一家はいつものようにTVに見入っていた。そこへ突然、音楽や聴衆の歓声をバックに女の声でガロワ氏の家の電話番号が懸賞の番号となり、シムカの車がガロワ氏に、息子にもミニ・カーが当ったと告げた。今すぐにパリのオランピア劇場にお出で下さい、そこで賞品を渡しますと言うのだ。初めは疑ったものの冗談ではありませんという相手の詳しい話も聞き、一家は思いがけぬ幸運に有頂点となり劇場に駆けつけた。入口にはキチンとした身なりの男が待っていて、懸賞をスポンサーした自動車会社の宣伝係だと言い、切符を渡し、ショーの終りに授与式が行なわれます、それまで息子さんを預かりますと言った。夫妻は喜んでショーを見ていた。しかし、ショーが終っても何も起こらず、観客は帰り出し、息子があの男と一諸に消えてしまった。巧妙に仕組まれた誘拐であった。あの宣伝マンこそ“スイスのシモン”(時計のように精密な仕事をやる男)の異名を持つシモン(J・L・トランティニヤン)であり、妻のマルチーヌ(C・ルルーシュ)と相棒シャルル(C・ジェラール)と共謀して、ガロワ氏の勤める銀行から百万ドルを手に入れるための芝居であったのだ。そして誘拐事件が大騒ぎになったので、銀行は対世間の信用のために金を出した。彼等は計画通り金を手に入れフランスからおさらばしようとした時、シモンが逮捕された。何者かの密告である。マルチーヌとシャルルは危うく逃れられた。判決は二十年の懲役。しかし、シモンは五年しか刑務所にいなかった。仲間の結婚式を利用しての脱獄だ。見事な“スイスのシモン”である。彼はジャニーヌ(ダニエル・ドロルム)というオールドミスのOLのアパートにもぐり込み、シャルルや金持の事業家と再婚しているマルチーヌと会った。彼女は心変りをしていなかった。彼等の間の娘は六歳になっていた。一方、警察は担当警部(イヴ・ロベール)中心にシモンを必死に追っていた。しかし、シモンはあっちこっちと手を打って捜査網を混乱させ、隠し場所に眠っていた百万ドルを手に入れ、裏切り者の始末を急いだ。それは何とガロワ氏だった。あの事件直後、金はしばらく寝かせておくというシモンを信じきれず、ガロワが警察に密告んだのだ。シモンが逮捕されたおかげで、彼は銀行の部長に昇進していた。だが、シモンは血を流す仕事は嫌いであった。彼は、シャルルと二人でちょいと脅しあげた。ガロワ氏は警察に泣きつく。が、そこで彼は自分が共犯者であった事を自ら認めざるをえなくなる。警察が密告の電話の声をテープで取っていたのだ。……シモンはシャルルと国外へ旅に向かう、万事好調、新しい人生へ向けて……
スタッフ・キャスト
- 監督
- クロード・ルルーシュ
- 脚本
- クロード・ルルーシュ
- ピエール・ユイッテルヘーベン
- クロード・ピノトー
- 製作
- アレクサンドル・ムヌーシュキン
- 撮影
- ジャン・コロン
- 音楽
- フランシス・レイ
- 編集
- マリー・クロード・ラカンブル