ロレンツォのオイル 命の詩のレビュー・感想・評価
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凄まじい執念…
医師の言うこと聞いても、一向に難病の息子の病状が改善しないばかりか、悪化するばかり。息子に残された時間も少なく、苦しむ息子の姿を見ては何か他に方法はないのかと考えるのが親の常。それなら自らが病気、医学を勉強しようとしたことがこの夫婦の凄いところ。実際オイルは予防には効果があるようで映画のような特効薬ではないようだが、夫婦の血の滲むような努力の結晶であることは紛れもない事実。過度な感動シーンを演出せず、病状も目を背けたくなるようなリアリティある演出が良い。臨床試験をしないと、商品化できない科学者側の立場と、親の焦りも上手く描いている。科学者の協力も仰いでいる患者の会の存在も何とも悩ましい。ニック・ノルティ、スーザン・サランドンと共にロレンツォの子役は名演技だった。
「神は真実である。あなたがたを耐えられないような試練に会わせることはない」は真実か? 医者出身の監督だからこそ描ける、極限の人間讃歌!
副腎白質ジストロフィー(ALD)の息子を救うべく奮闘する家族の姿を描いた、実話を元にした難病ドラマ。
監督/脚本/製作は『マッドマックス』シリーズや『トワイライトゾーン/超次元の体験』の、後のオスカー(長編アニメ映画賞)監督ジョージ・ミラー。
元医者という異色の経歴を持つジョージ・ミラーだからこそ描けた、真に肉薄する難病もの。
とにかくALD患者のロレンツォくんの描写には、残酷なまでに血が通っている。
一切の綺麗事を排除した、迫真した病気の描写には目を背けたくなること間違いなし。
この映画の凄いところは、ロレンツォの両親を聖人として描いていないこと。
ALDの治療法を独学で探求するお父さんは、その多忙さで狂気の狭間に陥るし、お母さんは心の余裕を無くしてどんどん厭な人間になっていく。
難病患者を介護する立場の人間を、非情なまでのリアリティをもって描いている。
「この病は母親の遺伝子からもたらされる」という残酷すぎる現実。これを突きつけられたミケーラさんの心境は如何ばかりか。
こんな厭な描写をわざわざ挿入している。まるでジョージ・ミラーの、このALDという病の真実から目を逸らさないという確固たる意志を表しているようだ。
決して、鑑賞していて気持ちの良い映画ではない。
しかし、現在でもALDは難病指定された病魔であり、日本国内でも約200人の患者が苦しんでいる。
もしかすると自分の身の回りで起こるかもしれない出来事に対し他人事にならないためにも、こういった苦しい映画を鑑賞することは必要なのではないだろうか?
今はちょうど「24時間テレビ」の放送時期。意味のわからないマラソンや芸能人の隠し芸を披露するくらいなら、こういった名画を放送してほしい。
気になる点としてはアフリカの扱いかな。
「この人生は戦いだ。勝敗は神の手にある。戦いを祝福しよう!」という、死ぬほどカッコ良いスワヒリ戦士の言葉の引用と共に幕を開け、その後東アフリカのコモロ諸島で暮らしていた頃のロレンツォのシークエンスが続くことからも、「アフリカ」というのがキーワードの一つであることは間違いない。
フィル・コリンズの歌う「ロレンゾ」という楽曲は、ロレンツォの母親ミケーラさんの詩を元に制作されている。
「back to East Africa」という歌詞が印象的なことからもわかるように、オドーネ一家にとってアフリカというのは特別な意味を持つ場所だったのだろう。
この映画からは、はっきりいってそこがあまり伝わって来なかった。
アフリカ人のオモウリ青年がキーパーソンになるのかと思ったが、彼が渡米した後はほとんどモブのような扱いになる。
何故オモウリ青年が必要だったのか、そこをストーリーにもっと組み込んで欲しかった。
オドーネ夫妻が作った「Lorenzo's Oil」は、今だに有効な治療法として利用されているようだ。
とはいえ、本作ではまるで特効薬のように扱われている「Lorenzo's Oil」だが、実はこれには発症を予防する効果はあっても、一旦発症してしまった神経症状の進行を抑制する効果はないようだ。
この映画が公開された当時は、治療薬として信じられていたようなので真実と違うのは仕方ないと思う。
まぁ映画を観て実際に「Lorenzo's Oil」を与えてみたALD患者の親は、思ったような効果が得られず大いに失望しただろう。これもまた残酷な現実である。
ちなみに、日本では「Lorenzo's Oil」は保険適応外のようだ。うーん、それってどうなの?
『マッドマックス』の制作者が作ったとは思えない、リアリティのある難病ものヒューマン・ドラマ。
…いや、よく考えたら『マッドマックス』も難病ものか。
そう考えたらジョージ・ミラーの制作する作品は一貫していると言えるのかも。
まぁ観ていて辛い映画ですが、たまにはこういう作品も鑑賞しなければならんでしょう。
「神はあなたがたを耐えられない試練には会わせない」という言葉は果たして真実か。
少なくとも、試練に打ち克つためには人間の執念と狂気が必要なのだということを教えてくれる一作。
お涙頂戴系ではない
愛する子どもが不治の病に…という話なので
純粋に泣けるかなと思って借りたのだけど、とても社会派な映画だった。
もちろん、人によっては泣ける映画でもあると思う。
ちなみにノンフィクションである。
医学的にマイナーな難病を発症した場合に起こる各種の問題について
非常に細やか、かつ真に迫った描写で問題提起している
具体的には、治療方法が確立していない難病について、
効果が不確実な治療をいわば人体実験的に行うことの是非、
医師でない者が治療方法を発見し、他人に実践させることの是非、
植物人間状態を維持するに留まる治療法を継続することの是非、
寝たきりの子を看護しなければならない家族の在り方、
などなどについて、各人の立場を十分に尊重したうえで説得的に描く。
常識的に考えれば、素人が勝手に編み出した治療法を、
世間に周知させて試させるなんてとんでもない話であるが、
この映画の場合は、そのままだと死を待つしかない状況において、
一般的な医師よりも知見がある素人が、
完全な善意で確立した、副作用がまず考えにくく、
金銭的な問題もほとんど生じない治療法である、
という特殊事情があるため本当に悩ましい。
30年前の映画であるが、治療法の発見から実施までの期間が長すぎるという問題は
未だに臨床医学の大きな課題である。
他の問題についても、現実に何らかの形で、患者やその家族のためになる制度の確立に
大なり小なり寄与する内容であり、本当の意味で意義深い作品だと思う。
ただ、真面目すぎる映画なせいか、面白さは感じにくい。
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