山
劇場公開日:1956年9月15日
解説
アルプスの峻峰に大ロケを敢行した山岳映画。山を愛する老ガイドとその弟の愛情の相剋を描いたアンリ・トロワイヤの小説を「黒い絨毯」のラナルド・マクドーガルが脚色、「ケイン号の叛乱」のエドワード・ドミトリクが製作・監督、撮影も「ケイン号の叛乱」のフランツ・プラナー、音楽はダニエル・アンフィシアトロフ。主演は「日本人の勲章」のスペンサー・トレイシー、「白い羽根」のロバート・ワグナー、「星のない男」のクレア・トレヴァー、「青い戦慄」のウィリアム・デマレスト、インドの女優アンナ・カシュフィなど。
1955年製作/アメリカ
原題または英題:The Mountain
配給:パラマウント
劇場公開日:1956年9月15日
ストーリー
スイスのアルプスの麓にザハリー(スペンサー・トレイシー)とクリストファ(ロバート・ワグナー)という兄弟が住んでいた。二人の父は名うての登山ガイドだったが落雷で死に、母のクリストファを生んで2年目に死んだ。もう50に手のとどくザハリーは弟が生まれた時、雷で道が閉ざされていたので産婆の代わりをつとめたりした関係上、20も年令の違うクリストファを我が子のように可愛がっていた。しかし父と同じく登山ガイドとして一生を山に託す兄と違い、きまぐれなクリストファは時には盗みを働いて平然としているような若者だった。ザハリーが弟を荷物運搬人として山へつれて行くことにしたのも、こうしたクリストファの気持ちを、清らかな山の空気が正しい方向にむかわせるだろうと考えたからだった。だがザハリーが登山客を案内して、山に登ったとき岩崩れで客の一人が死に、三週間後、なだれで又二人が死んだ。3度目の遭難でザハリーと登山客は氷の絶壁から墜落。客は死に、ザハリーは半年も病院生活。彼は山に見放されたと信じ、以後麓で羊を飼って暮らすようになった。ある日、ザハリーは村に一つしかないジョゼフの、酒場のラジオで、インドから来た旅客機が山の向うに墜落したことを知る。その夜更、わが家に戻って来たクリストファはザハリーにとんでもない相談を持ちかけて来た。家を売って町に出て、スポーツ用品店に投資するという。ザハリーが家を売ることだけは承知できないというと、弟は兄同様の権利があるときかなかった。翌日、酒場には遭難の臨時ニュースを聞くため大勢の人が集まり、中にクリストファの姿もあった。山へ登った救援隊は夕方になって、事故死した隊長の死体を運んで引返して来た。11月は山が一番危険なので政府の命令で捜索は中止された。その夜、家を買うといった男が断って来た。クリストファは旅客機が大金を積んでいると知り、それを秘かに奪おうと兄に相談を持ちかけた。ザハリーは、金ができれば弟は家を売るまいと考え、加えて久しぶりに山に挑戦する決意で申し出を承諾。翌朝、二人は身仕度を整え家を出た。だが清らかな山の姿を見たザハリーは無謀な企てを恥じて引返そうとしたが、クリストファは不承知で一途に大破した旅客機の許に急いだ。機体の破片や人間の四肢が散乱する中で、夢中で死体の懐中を探るクリストファ。だが機体の中にはインド人の女が生き残っていた。ザハリーは弟の反対を押し切って、急造のソリに娘を乗せ、山を降り始めた。クリストファは、娘を助ければ金を盗んだことが発覚するので、兄を殴りつけ引止めようとした。ザハリーはそこに、可愛い弟の代り、死人の金を盗む卑劣な男の姿を見た。弟にかまわず黙ってソリを曳くザハリー。置き去りになるのを恐れ追いすがるクリストファは足を、踏みすべらせて氷河の割れ目へ転落。だがザハリーは振向こうともしなかった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- エドワード・ドミトリク
- 脚本
- ラナルド・マクドーガル
- 原作
- アンリ・トロワイヤ
- 製作
- エドワード・ドミトリク
- 撮影
- フランツ・プラナー
- 音楽
- ダニエル・アンフィシアトロフ