ノアの箱船

解説

「人生サーカス」「イスラエルの月」のミヒャエル・クルティック氏が監督したWB社の超大作で、同社撮影所副所長で「紐育狂想曲」「怪獣征服」の脚色者たるダリル・フランシス・ザナック氏が書卸した原作を「母よ愚かなれ」「軍法会議(1928)」のアンソニー・コールドウェイ氏が脚色したものである。主演者は「海の野獣」「人生サーカス」のドロレス・コステロ嬢で、「輝く天国」「三人水兵恋行脚」のジョージ・オブライエン氏が相手役を勤め、「ソレルとその子」「女シーク」のポール・マッカリスター氏、「リンダ」「決死隊」のノア・ビアリー氏「速成恋愛術」「彼とお姫様」のルイズ・ファゼンダ嬢、グィン・ウィリアムス氏、マルコーム・ウェイト氏、マーナ・ローイ嬢等が助演している。カメラは「ブロードウェイ(1929)」「最後の警告」のハル・モーア氏と「栄光」のバーニー・マクギル氏とが共同で担任した。

1929年製作/アメリカ
原題または英題:Noah's Ark

ストーリー

欧州の空に暗雲張る1914年、豪雨を衝いて巴里を発したコンスタンチノーブル行きの国際急行列車はフランスの国境近くを疾走していた。乗客の七にはドイツ人の劇団、その花形のマリー、米国青年ビル・トラヴィスその親友アル・ロシアの将校ニコロフ、フランス兵、獨逸兵等がいた。聖書を読んでいた牧師風の老人は一人の母が子供を邪険に折檻するのをみて諫めた。ニコロフはこの牧師の説論を嘲罵した。心無き人々は彼に雷同した。その瞬間列車は鉄橋から墜落した。ビルとアルはマリーを助け近くの小さい宿屋に避難する。牧師、ニコロフ等もこの家へやって来る。その夜マリーを襲ったニコロフはビルの為に懲らしめられる。その時佛獨開戦の報が来る。ビルとアルとマリーは直ちに巴里へ引返す。マリーとビルとは恋仲になって楽しい日を送っていが、その間にも戦争は続き米国も参戦するに至ってアルは直ちに出征軍に加わった。然しビルはマリーの祖国と戦うのを好まず巴里に止まった。だが1日マリーと共に街上で米国出征軍の群に出会い、ビルの熱血は躍って銃を執る身となり、アルと砲煙弾雨の巷に再会したが幾何もなくアルは名誉の戦死を遂げてしまう。マリーは酒保の踊り子となって良人ビルを探したが、皮肉にも彼女が避けたいと思う男とであった。その男というのは帝政ロシアが倒れて後聯合軍情報部付となったニコロフで、彼はマリーに肘鉄砲を食ったのを恨み彼女をドイツの間謀として銃殺の刑に処せられるよういした。しかも彼女に銃口を向けて立つ兵士の中にはビルがいた。ビルは妻の無罪を主張し二人は相擁して泣いた。その時刑場の真上に獨軍の砲弾が炸裂し、居合わせた者は忽ち破壊された家屋の地下室に生き埋めとなった。その中には例の牧師もいた。そして欧州大戦をノアの大洪水に例えて説いた。物語は五千年の昔に返る。邪神ヤグテの祭典に美女の犠牲が捧げられようとする。その美女は聖者ノアの家にいる女ミリアムと決められ暴王ネピリムのもとに連れて行かれる。彼女と婚約をしているノアの子ヤペテは彼女を奪返さんとして却って眼を焼かれ石臼回しの微役を課せられる。ノアは神託によって洪水の起こることを知り山上に大いなる箱船を造り始める。ミリアムが犠牲に捧げられる日こそノアと聖約の日であった。彼女が殺されんとする説き大洪水は起こって邪神を奉する人々は皆溺死したが、ヤペテはエホバの導きによってミリアムを伴い、盲いの眼も開かれ箱船に収容される。牧師が語り終えた時赤十字救護隊が生埋めとなった人々を救いに来る。そして折りしも休戦条約が締結され、人々は歓呼して平和克服を迎えた。

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