「ジュディ・ガーランドが最後に輝いた映画」スタア誕生(1954) 星組さんの映画レビュー(感想・評価)
ジュディ・ガーランドが最後に輝いた映画
落ちぶれた俳優ノーマンに見出された女性が、スターへの道を歩む物語。この頃、ジュディも同じくどん底にいた。スターへの道を求めていた。
ふたりは結婚しエスターの歌の仕事も順調に進み、彼女はスターへの階段を登った。しかしノーマンは彼女から養ってもらうという状況から脱出することは出来なかった。苦しむノーマン、それを優しくフォローするエスター。エスターはそれで上手くいくはずだと思っていた。自分の存在がエスターをダメにすると考えたノーマンは…。
復元版でも178分と長いが、彼らの人生をなぞるには短いくらいかも知れない。
芸能界という特殊な世界の物語だが、浮き沈みする、誰の人生にも当てはまる。
ノーマン役のジェームズ・メイソンの苦悩する演技は流石意外無いが、エスター役のジュディはこれまでのエンタメ業界での実績と、堕ちた実生活、それが重なりリアルな世界を見せてくれる。同時に単に歌って踊る従来のミュージカル俳優ではなく、人間ドラマに耐えうる主人公像に重ねた。
よくアカデミー賞の話になるが、この対象年度の主演女優賞は喝采のグレース・ケリーになり、ジュディはオスカーを手にすることはできなかった。確かにグレースの演技は良かったが、胸に突き刺さる優れた演技をしたのはジュディだと思っている。
賞には”票を買う”ということもある。作品や会社の株を上げるため、今までの付き合い、会社・広報の戦略で争い獲得するのだ。純粋な票で優秀賞を獲得もするが、付き合い上「1票 頼むよ、キミ」の世界もないわけではない。当時、世間の評判の悪いジュディよりも、逆に綺麗で上品なグレースの方が表獲得運動に有利だと、誰でも思うが、実際のところはわからない。
映画の話。
いちばん好きな場面は、最後のステージだ。
エスターの言葉、拍手、笑顔。
観た人の心に残る良いシーン
良い映画だと思う。
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ちなみに、日本でも”これ?”…というものが大賞を獲得する時がある。
1989年のレコード大賞を逃した美空ひばりの「川の流れのように」も同じ、その年の大賞はほとんどの人の記憶には残ってはいないはずなのに、この歌は今でも最高位に扱われている。”票を買う、買わない” は別として、審査員の能力と審査の基準の曖昧さが、良いものを排除する世の中の仕組みも実際はあるのでは?そんな気がする。
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