劇場公開日 2020年7月10日

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「頭巾を被ったジョンがあまりにも印象的で見事だったが、話の作り過ぎ感が…」エレファント・マン KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 頭巾を被ったジョンがあまりにも印象的で見事だったが、話の作り過ぎ感が…

2025年11月9日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

44年前の劇場鑑賞以来という、
本当に懐かしい作品がTV放映されたので
再鑑賞した。
特に記憶に残るのは、ラストの人間らしく
横になって亡くなるシーンだった。

産業革命の19世紀という時代を
背景としながらも、
このドラマの舞台としては、
その進歩性からは取り残されたかのような
雰囲気を醸し出す白黒フィルムでの映像は
素晴らしいの一言だ。
また、ジョンと医師の人間としての苦悩も
良く描かれていたように思う。

しかし、今回の鑑賞で気になったのは、
まずは、冒頭とエンディングを中心とする
母親の登場。
観る側の想像力を消し去ってしまうような、
また、誤解の招きと解説のし過ぎで、
彼女の登場は写真だけにして、
むしろ省くべき箇所ではなかったろうか。

そして、そんなことも含め、
ケンドール夫人の聖人君子的設定や、
何故ジョンの病室が
人目に付き易い1階なのだろうか、とか、
更には、見世物小屋の親方や病院の夜警らが
ジョンを海外へ拉致する場面などにも
史実とは異なりディフォルメ化したであろう
話の作り過ぎ感が気になった。

ところで、ジョンを理解するのが
上流階層であることに対して、
虐待したり、金儲けの対象としか見ないのが
下層階級という構図に違和感があった中、
海外に連れ去られた彼を救ったのが
見世物仲間としたのは、
そんな構図の修正だったのだろうか。

また、映像としては、
頭巾を被ったジョンの“絵”があまりにも
印象的な見事さで、
むしろ頭巾を取った彼が霞む位。
ここは、彼の一部を垣間見せるだけにして、
観客の想像にまかせる演出手法を取った方が
良かったのではないかと思ったが、
デヴィッド・リンチ以外の監督だったら
どう描いていただろうか。

そして、印象に残っていたラストシーン。
しかし、今回、何故か感動が薄かったのは、
最後にジョンが自殺したことにするために、
先に述べたように、
主役の2人以外の要素の話の作り過ぎ感
の結果、彼の死にそれまでの展開が
上手く収束していないかのように
感じてしまったためだったろうか。

KENZO一級建築士事務所
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