地上(ここ)より永遠に
劇場公開日:1953年10月18日
解説
真珠湾攻撃が迫るハワイを舞台にアメリカ陸軍組織の腐敗や男女の愛と苦悩を描き、1954年・第26回アカデミー賞で作品賞・監督賞など8部門に輝いた名作。ジェームズ・ジョーンズのベストセラー小説を原作に、名匠フレッド・ジンネマンがメガホンをとり、バート・ランカスター、フランク・シナトラら豪華キャストが集結した。1941年、ホノルルの陸軍兵営に配属された青年プルーイットは、中隊長の命令に逆らったため嫌がらせを受けるように。曹長ウォーデンは反抗をやめるよう説得するが、プルーイットは聞き入れようとしない。ある日、プルーイットはクラブで知りあった女性ロリーンと恋に落ちる。一方、ウォーデンは中隊長の妻カレンと不倫関係にあった。
1953年製作/118分/アメリカ
原題:From Here to Eternity
配給:コロムビア
スタッフ・キャスト
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何十年ぶりかの再鑑賞だったが、
現在はネット時代。
当時は知るよしも無かった情報が手に入り、
初めて知ることも多い。
まず、作品名の“地上より永遠に”に
続く言葉が
“呪われたる…兵士に憐れみをたれたまえ”と、まるでキリストの言葉の如くであったこと。
また、原作がテレンス・マリックの
「シン・レッド・ライン」と同じ人物である
ことも。
更に、「ゴッドファーザー」に出てくる歌手が
フランク・シナトラをモデルとしている
ことは聞いていたが、
出演を計った作品がこの「地上より…」だった
ことは初めて知った。
この作品に先駆けて、ジンネマン監督の
初期の頃の「山河遙かなり」を観たところ、
まだまだ演出に不満を感じたのだが、
5年でこんなにまで
演出力が進歩するものかと驚いた。
この映画は、基本的に軍隊内部の
非人間性を描いた作品なのだろうが、
「山河…」に比べると、
この作品の方が圧倒的に構成要素が多い。
それなのに、各エピソードを
上手く処理した手腕は見事と言うしかなく、
圧倒的に優れた作品として鑑賞出来た。
この作品の評価、キネマ旬報では、
より過酷な軍隊内部を描いた邦画
「真空地帯」等が先に上映されていて、
「地上より…」での制裁等が
生温く感じたためか分からないが、
「禁じられた遊び」や「ライムライト」等の
名作揃いの年で第16位と沈んだものの、
アカデミー作品賞・監督賞受賞は
納得の完成度に思えた。
それにしても軍隊という組織は
恐ろしい所だ。
どんなに辛い事があったとしても、
そこに戻ろうとするベクトルが生じるとは。
ここは男性にとって
魔窟のような場所なのだろうか。
そして、女性はその世界から距離を置く存在
でもあるのか。
青年兵士が曹長の計らい(多分)で
名誉の戦死の扱いになって、
恋人が彼の母親にその勲章を送ろうとした。
しかし、母親は受け取ろうとしないのは、
そんな意味合いを含めたのだろうか。
次の鑑賞は、この作品から6年後の
まだ未見の「尼僧物語」だ。
更にこの後の監督作品「わが命つきるとも」も
名作だったとの思いがあるので、
「尼僧…」の鑑賞が
ますます楽しみになってきた。
2021年11月27日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ボクシングで友人を失明させた過去が有るモンゴメリー・クリフトは断固として他部隊とのボクシング試合に出ることを拒否。逃げて隠れていたのに突然の日本軍攻撃の中、軍人としての使命感から恋人の願いを振り切り部隊に戻る。しかし、あっさりと味方に撃ち殺されてされてしまう。自己の規律を守りきるその不器用な生き方に、監督は自分自身を重ねているのだろうか。でも、兵士フランク・シナトラの死同様に、あまりに悲しすぎ、あまりに意味が無さすぎる。社会の底辺の人間の定めなのか。
そうか・・・成る程、そこに監督の静かな怒りと抗議がこめられていたのか。
2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
イギリスのチャーチル首相は、日本が真珠湾攻撃で宣戦布告したことを大層喜んだという。ヨーロッパ戦線でナチス・ドイツに対抗するには、アメリカの参戦が必要と認識していたからだ。そんな国際緊張の時代背景のハワイ・ホノルル基地の腐敗を描くフレッド・ジンネマン監督の真意は、どこにあるのだろう。ダラケタ軍内部の単なる暴露なのか。冷戦時代の軍の引き締めを求めたのか。南国の楽園が一瞬にして戦場になる無情を描きたかったのか。アメリカでは、アカデミー賞始め高く評価されているが、日本ではそこまでではない。ジンネマン監督の律儀で緩みのない演出と豪華なキャスティングを楽しむのが限界である。モンゴメリー・クリフトが演じるラッパ手ブルーイットが、アンジェロの死を悼み涙を流しながら吹くシーンが印象的。
2019年12月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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元プロボクサーだったプルーイット(クリフト)は軍内での試合に出るよう説得される。しかも上官の昇進のためだ。断ったためか、一人だけ嫌がらせを受けるようになる。古くからの友人マッジオ(シナトラ)と一緒に憂さ晴らしのため酒場へ行って、ロリーン(ドナ・リード)と知り合う。そして、ウォーデン曹長(ランカスター)は上官の妻カレン(カー)と不倫の恋に落ちる。
ボクシングやらケンカやら途中のストーリーはそれほどいいとは思わないけど、アーネスト・ボーグナインとの絡みは面白い。ピアノのことでケンカし、トランペットで魅了するプルー。そこからは彼のラッパ吹きとしての才能が開花する。それに加え、ブルースギターを奏で、兵士たちが再入隊ブルースなどといった曲を歌ったりするシーンが好きだ。
クライマックスにあたる日本軍の真珠湾攻撃はこの年代の映画にしては迫力があった。しかし、その前にトラックから落ちてマッジオは死亡、攻撃当時はプルーもケンカで負傷し、ロリーンのもとで匿われていたのだ。味方が攻撃されるのに寝ちゃいられないってなもんで、彼はヨロヨロと兵舎へと進むのだが、味方によって撃ち殺された。
戦争の虚しさというより、犬死のような結末を迎えた2人。船上でのロリーンの会話を聞いていると悲しくなってしまう・・・