キング・コング(1933)のレビュー・感想・評価
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偉大なる魔神
言わずと知れた特撮怪獣映画の古典。
本作が無ければ特撮の発展や怪獣映画というジャンルも無かった。『ゴジラ』も作られていなかった。
怪獣映画というジャンルに留まらず、秘境アドベンチャー映画としても悲恋映画としても人間の傲慢を描いた作品としても古典。
レイ・ハリーハウゼンは本作を見てストップモーションアニメの道を志した。
田中友幸は『ゴジラ』を作るきっかけとなった。
円谷英二は特撮の道を志した。
ピーター・ジャクソンは映画監督を志し、後に自らの手でリメイク。
映画界に遺した功績、後世へ与えた影響は計り知れない。
そんな名作中の名作を、もう何度も見ているが今更ながらレビュー。
映画監督のカール・デナムは新作撮影の為、街中で見掛けた若い女性アンをスカウトし、旧知の船長を雇い、半ば強引に出港。行先はデナム以外誰も知らない。
航路も半分過ぎた所で行先を明かす。
地図にも載っていない謎の島“髑髏島”。そこには人でも獣でもない“何か”がいるという。島民はそれを“コング”と呼んでいた…。
開幕暫くは平凡な人間ドラマ続く。決して優れた描写とは言えないが、ヒロイン、ヒーロー風の相手役、傲慢な事件勃発役とくっきり提示。
島に着いてからは一転してワクワクドキドキ感が高まる。未知の世界や秘境への冒険は、昔も今も胸躍らされる。
島民の描写はさすがに今、指摘されても致し方ない。ステレオタイプであったり、アンを拐うなど野蛮人のよう。
そしていよいよ、主役登場。
隔てられた巨大な壁の向こう。ジャングルの中から、生け贄にされたアンの前に姿を現したのは…
キング・コング!
本作より8年前、『ロスト・ワールド』で名を馳せたウィリス・オブライエンによるストップモーションアニメ特撮。
ダイナミックな動きやアクションは最大の見所だが、コングのちょっとした表情や仕草こそ見もの。芸が細かい! オブライエンもゴリラなどを観察し、細かな所こそ拘ったと思う。
実写の人間との絡みや肉食恐竜との闘いは語り継がれる。コングvsティラノは円谷英二が『キングコングの逆襲』でオマージュ再現。
我々が『ジュラシック・パーク』でリアルなCG恐竜に驚いたように、本作のストップモーションアニメで動く恐竜に当時の人たちはどれほど驚かされた事だろう。
ステゴサウルスやブロントサウルスなどの草食恐竜が人間を襲うのは今見るとアレレだが、ステゴサウルスとの遭遇シーンはスピルバーグが『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』でオマージュ再現。1925年の『ロスト・ワールド』と並び恐竜映画としても古典。
『ロスト・ワールド』と本作でウィリス・オブライエンの名は映画史に刻まれたと言えよう。
技術が盗まれる事を危惧し、弟子を取らなかったオブライエン。しかし唯一取った弟子が、ハリーハウゼン。
後のハリーハウゼン特撮もオブライエンが居なければ無かった。オブライエンからハリーハウゼンへ、ハリーハウゼンから後世の名だたる映画製作者へ。技術はリスペクトされ受け継がれている。
コングや恐竜たちを前に人間たちは為す術もない。
が…、一見人間たちが脅威に晒されているようだが、しかしよく見ると、人間たちこそ無情に命を奪う。
ステゴサウルスに爆弾で致命傷を与えた後、銃でトドメを。非常に残酷に感じた。
その最大の被害者は、無論コング。
コングも人間を噛み殺したり、踏み潰したりと近年のイメージでは考えられない凶暴性を見せているが、あくまでこれらは当時物珍しかった巨大モンスター=恐ろしいという見世物的なもの。悲劇や残酷性とは違う。
悲劇や残酷さはクライマックスに襲う。人間を…ではなく、コングを。
ジャックによって救出されたアン。追ってきたコングを爆弾で気絶させ、デナムは本土へ連れ帰る。
故郷を遠く離れ、拘束され、人間たちの見世物に。
抗い、逃げ出すも、エンパイア・ステート・ビルの天辺にて追い詰められ、戦闘機から銃撃され…。
映画史上でも最も悲劇的で残酷。私はいつも見る度に同情を禁じえない。
コングが、何をした!?
ラストシーンのデナムの名台詞。だが、私の意見は違う。
人間の強欲がコングを殺したのだ。
コングの魅力、ウィリス・オブライエンの特撮、色褪せぬ作品の面白さもさることながら、コングの末路…。地球上の尊い生命を奪っていく我々“怪物”へ突き付けるメッセージ。
今尚愛され、作り続けられる所以。
怪獣映画の古典。そして、元祖怪獣王。
キング・コング!
1933年(昭和9年)の作品
ゴジラVSコング公開ということで久々に2度目の鑑賞
1933年(昭和9年)の作品
ナチスが政権を獲得しルーズベルトが大統領になり小林多喜二が虐殺され宮澤賢治が病で亡くなり上皇明仁が生まれた年
CGはもちろん無いしスターウォーズの頃のような特撮技術もない時代によくもこのような高いクオリティーの作品を作ったもんだ
凄いぜハリウッド
これなら日本よこれが映画だとドヤ顔になっても良い
キングコング登場は開始40分後くらい
日本なら着ぐるみを選択するだろうがハリウッドは違う
人形アニメーションだ
キングコングも恐竜もその他巨大生物もそれで表現している
キングコングを観る前にシンドバッドを観たからそうでも無かったが初めて観た時は衝撃だった
これが世界の映画をリードしやがてSFXやVFXに繋がっていくのである
ゴジラが水爆実験によって目覚めた古代生物ならばキングコングは冒険映画を撮影するためにジャングルで発見された怪物
物語の設定からもお国柄の違いが出ていて面白い
ヒロインのアン・ダロウはリンゴを盗んだことがきっかけで芸能界入りすることになる
弟が勝手に応募したからとかが一般的だが今の時代にこんなことをカミングアウトしたら炎上間違いなしだろう
それにしてもリンゴを盗むことが世界恐慌の暗喩という解釈はいくらなんでも邪推ではなかろうか
島のリーダーが階段を降りる際にその前をちびっ子がボサーと突っ立っていた所を慌てて大人の女性が連れ戻したがあれは演出なのかアクシデントなのか
演出だとしたら芸が細かい
島の住民は黒人を起用している
日本でモスラだとどう見ても日焼けメイクの日本人ではっきりいってしょぼい
日本では外国人が珍しい時代で特に黒人は貴重な存在だったのかもしれない
ロープで救出する際はハラハラドキドキした
島の暴君もガス爆弾一発で呆気なくダウン
ナイフでちょっと刺されただけでとても痛そうな顔をしている
ゴジラと比較すると全然タフじゃない
ニューヨークで見せ物になる
それが良くない
愚かである
人違いだからって若い女性をポイって捨てるなんて酷すぎる
キン肉マンに出てきた中野さんの嫁公子を投げつけたダイブツラーを思い出した
クライマックスはエンパイア・ステート・ビルのてっぺんによじ登ったキングコングと数機のプロペラ飛行機との対決
ボニーとクライドのように銃殺される
何人もの人間を殺したにも関わらず落ちていくキングコングに悲哀を感じる
エンパイア・ステート・ビルとキングコングの一連のシーンはハリウッド映画の歴史における名場面の一つだ
トラブルの責任者は悪びれることもなく野獣は美貌に負けたと寝ぼけたことを言ってこの映画は幕を閉じる
困ったものである
技術的にはどう見てもジェラシックパークの方が断然上だが映画そのものの面白さとしてはこっちが上
THE EIGHTH WONDER OF THE WORLD. イマジネーションの創成期
2021年公開予定の「ゴジラvsコング」に向けてオリジナルをAmazonプライムで観賞してみました。
これが作られたのが1933年ってのがスゴい‼️1933年を調べてみるとヒットラーがドイツの首相に就任とか日本が国際連盟を脱退とか歴史の教科書に乗っているような事柄が出てくるぐらいに古い作品です。当時の人はビックリしただろうなぁ。
意外とコングがよく動くんですよね。そして恐竜が出てきて戦ったりするのに驚きました。デカいゴリラと恐竜と戦わせたら面白いだろうなっと考えるのは今も昔も変わらない発想ですね。技術は上がっても根っこは同じと思えます。
恐竜もステゴザウルスからアパトサウルス(草食なのに人間食べてた?)、ティラノサウルスと出ときますし、手足の付いた大蛇のような生き物は完全にオリジナルですね。うん、よくできてる。公開当時映画会社に「あんな生き物が本当にいるのか?」っと問い合わせが相次いだみたいですし、未開の孤島には巨大生物や恐竜がまだいると信じる事のできたいい時代ですね。
それにしてもコングさんって勝手に人類の味方イメージがあったのですが、結構暴れまくってましたね!村を破壊しまくってましたし、人を噛み殺してましたし。アンとの心の交流みたいなのもあるのかと思っていたら全くなかった‼️アンは最後までビビりまくってました。そりゃ、あんなデカいコングさんに襲われたら普通ビビるよな。
何はともあれストップモーションを用いて大きな動物が暴れまわる映画の元祖として歴史的な価値がある作品だと思います。
レジェンド・オブ・特撮映画
"キング・コング" シリーズ第1作。
DVDで鑑賞(字幕)。
本作がつくられていなかったら、ゴジラ・シリーズや他の特撮怪獣映画が製作されることは無かったでしょう。
否、ウルトラマンや仮面ライダーなど、全ての「特撮」と名のつく作品の原点にして問答無用のレジェンドです。
ストップ・モーションで表現されたコングは、当時の観客にとって本物の生き物の如く映ったのではないでしょうか。
今観ると動きがぎこちなく感じますが、なんせクォリティーがハンパない。どれだけの時間と労力が掛かったことか。
なので、多少の粗さは気にしない気にしない。それもひっくるめて、本作の味わい深さとなっているのかもしれません。
円谷英二特技監督が若かりし頃に、海外から本作のフィルムを取り寄せてひとコマひとコマ研究したと云う逸話も有名。
ウィリス・H・オブライエンのDNAが円谷英二に受け継がれた瞬間のように思えて、感慨深いエピソードだな、と…
「美女と野獣」を連想させる物語も魅力のひとつ。アンを巡る、ドリスコルとコングの男同士の対決な側面もあるかと。三角関係として捉えると別の面白さが見えて来ました。
それにしても、アンが不憫極まりない。命がいくつあっても足りません。そのくせ、コングを怖がりながらもいざという時には助けを求めるから、意外としたたかな女かも。
悲壮感漂うラスト・シーンが印象的でした。南海の孤島から大都会に連れて来られ、不安と恐怖から暴れ出したがために抹殺されてしまう悲劇。人類の身勝手さを痛感しました。
ただの怪獣映画で終わらないテーマ性を感じました。現在の特撮映画にも内包される主題であり、最初に放った本作はまさにパイオニア。永遠に語り継がれて欲しい名作です。
[余談]
コングの実物大模型の目つき、変態みたい(笑)。
※修正(2023/06/08)
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