エドワード・ヤンの恋愛時代

劇場公開日:2023年8月18日

解説・あらすじ

「クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」「ヤンヤン 夏の想い出」などで知られる台湾の名匠エドワード・ヤンが1994年に手がけた青春群像劇。

急速な西洋化と経済発展が進む1990年代前半の台北。企業を経営するモーリーは、自分の会社の経営状況も、婚約者アキンとの仲も上手くいかずにいる。モーリーの会社で働く親友チチは、モーリーの仕事ぶりに振り回され、恋人ミンとはケンカが絶えない。そんなモーリーとチチの2人を中心に、同級生・恋人・同僚など10人の男女が2日半という時間の中で織りなす人間模様を描き、心に空虚感を抱える彼らが自らの求めるものを見いだしていく姿を映し出す。

1994年の金馬奨で脚本賞・助演男優賞・助演女優賞を受賞し、第47回カンヌ国際映画祭にも正式出品。第79回ベネチア国際映画祭にてワールドプレミア上映された4Kレストア版で2023年にリバイバル公開。

1994年製作/129分/G/台湾
原題または英題:獨立時代 A Confucian Confusion
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2023年8月18日

その他の公開日:1995年(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第47回 カンヌ国際映画祭(1994年)

出品

コンペティション部門
出品作品 エドワード・ヤン
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(C)Kailidoscope Pictures

映画レビュー

5.0 都市を描く映画の名作

2023年10月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

エドワード・ヤン監督の一番の代表作は『クーリンチェ少年殺人事件』だというのが定着している。しかし、キャリア後期には『クーリンチェ』のイメージとは異なる、軽やかな作品を作るようになったのだけど、これはその走りとなった作品だ。この映画は、確か『クーリンチェ』から3年後に発表された作品だと思うが、前作とは全く異なる作風になっていて驚く。個人的には後期の軽やかなタイプの作品のが好きだ。

とにかくこの映画は、台北という街が魅力的に見える。観光的な魅力ではない。きれいな風景がいっぱいでてきたり、遊びに行く場所がたくさん映っているとかそういう意味ではなく、都市とそこに生きる人の息づかいがすごく伝わってきて、「ここで暮らしてみたいな」という気にさせるのだ。軽薄なようで何か切実なようで、人はこの都市で何を求めて生きているのか、都市に生きる生態系みたいなものが、軽やかだけど克明に刻まれている感じがする。都市を描く映画として映画史の中でも特筆すべき一本だと思う。
エドワード・ヤンの近代都市を捉える眼差しはこの後の作品でも存分に発揮され、『カップルズ』に『ヤンヤン 夏の想い出』へと結実する。軽やかだけど人間を見つめる眼差しは鋭い。この肩の力の抜けた余裕に痺れる。

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杉本穂高

4.5 1990年代台湾という「時代」

2025年8月15日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

幸せ

癒される

日本初公開されたのは1995年だから、もう今から30年近く前になるのか。4Kレストア版を観たのはおそらくそれ以来だが、全然そんなに経った気がしなかった。当時はチェン・カイコーの『さらば、わが愛 覇王別姫』やティエン・チュアンチュアンの『青い凧』、ウォン・カーウァイの『恋する惑星』、ツァイ・ミンリャンの『愛情萬歳』も公開され、1980年代末に躍り出たチャン・イーモウやホウ・シャオシェンも走り続けていて、中華圏映画が百花繚乱の時代に入った頃だった。いい時代だったな。

映画は製作当時の高度経済成長下の台北を舞台とした社会人の若者たちの青春群像劇ドラマで、金持ちの令嬢で会社社長のモーリーと彼女の下で働く親友のチチを中心にその同級生・恋人・姉妹・同僚など、どこか満たされず人生や恋愛に惑う大都会の10人の男女の2日半を描いている。同じ台湾ニューシネマでもホウ・シャオシェンは過去(1940~60年代)や田舎を舞台にすることが多かったんで、現在の大都会を舞台とした台湾映画はとても新鮮だった。台北も東京と変わりないぐらい都会なんだなぁとあの頃は感心した。そしてそこで繰り広げられる、人生に迷う若者たちの姿もまた日本と変わらないもので、とても惹き付けられたことを思い出す。

同じような青春群像劇を描く香港のウォン・カーウァイも4Kレストア版が公開されたが、彼と比べるとエドワード・ヤンの映画には若干だが時代性というものが含まれていることに気づいた。カーウァイの映画は普遍性は強いが時代性はあまり無い。ヤンの映画ももちろん普遍性は強いが(じゃなきゃ時代を超えた支持は得られない)、『恋愛時代』はそこにいくばくかの時代性も含まれているのだ。観ていて、あの頃の台湾、あの頃の東アジアが思い出されて、あー、あの頃はそうだったよな~と懐かしさになんだかちょっと目が潤んでしまった。そして原題の『獨立時代(独立時代)』は当時はいまいちピンと来なかったんだが、台湾は1980年代まで戒厳令が敷かれ、1990年代初めにようやく民主化されたという歴史を知ると、非常に深い意味を持つタイトルだったことが今になるとわかる。自由を得て「独立」した喜びと、手にした自由な世界での「独立」への戸惑い、言わば外的独立が終わった後の大都会での内的独立が描かれているわけだ。

まあ、とにかく最初に観た時同様にとても面白かった。やはり僕にとっては最初に観たエドワード・ヤン作品ということもあってこれが彼のベストである。

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バラージ

1.5 二千年前の君から、3日後のあなたへ。

2025年5月25日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

他人のネクタイを締めるのは意外と難しい。
普段何気なく行っている事でも、視点が変わるとあれ?どうだったっけ?と分からなくなるもの。
理想論も、情の前では机上の空論に過ぎない。

あ!っという間に、かくかくしかじか語らっているうちに若者の興味は日々違うものに更新されていく。
逆光が美しい夜明けのオフィスは、若者たちが太陽すらも追い越してしまった様に錯覚する。

青春群像劇を締める完璧なラストシーンは、もう一度観たくなるほど素晴らしい。語り部が例の思想家だったら面白い。彼もまた、呼び戻されたのだろう。

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や

3.5 【1990年代前半の台北を舞台にした同級生、恋人、姉妹、同僚などメンドクサイ男女8人の恋物語。それでも彼らは前を向いて生きて行こうとし、お互いの関係性も続けようとしているのである。】

2024年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、VOD

悲しい

知的

幸せ

■急速な西洋化と経済発展を遂げる1990年代前半の台北。
 若き女社長モーリー(ニー・シューチュン)が経営する会社の状況は良くなく、婚約者・アキン(ワン・ポーセン)との仲もうまくいっていない。
 チチ(チェン・シャンチー)は親友・モーリーの会社で働いているが、彼女に振り回され、恋人・ミン(ワン・ウェイミン)との関係も雲行きが怪しくなる。

◆感想

・正直に記載するが、実は今作が”4Kリマスター版”として、昨年8月に上映された時には
『牯嶺街少年殺人事件』の名匠、エドワード・ヤン監督の作品と言う事もあり、期待をして足を運んだ。
 だが、『牯嶺街少年殺人事件』の面影は無く、私の苦手な(と言うか一切見ない)トレンディドラマの様な展開と、登場人物の多さに、しっかりと理解できなかった作品である。

・で、悔しいので、一年振りに鑑賞をした訳であるが、流石に二回目となると人物相関図も頭の中に出来上がり、ナカナカに面白かった作品であり、日本のバブルの時代の若き働き手男女もこんな感じだったのかな、と思いながら鑑賞した。

<これは、私の勝手な感想だが、登場する男女たちは色々と面倒くさい状況の中でも対人折衝を諦める事無く、時には”生きて居る事は素晴らしい。”などと話し乍ら、前を向いて生きて行こうとしているし、お互いの関係性も続けようとしている。
 それこそが、故エドワード・ヤン監督が描きたかったことなのかな、と勝手に推測した作品である。>

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NOBU