「至高の愛情」愛、アムール pullusさんの映画レビュー(感想・評価)
至高の愛情
良質な作品である。
『白いリボン』や『ピアニスト』で知られるミヒャエル・ハネケの集大成。70歳でも現役の映画監督というから驚きだ。今回の作品は70歳を迎えた彼だからこそ撮れる作品なのだろう。
また、ジョルジュ役には『男と女』のジャン=ルイ・トランティニャン。『男と女』の公開から半世紀も経つのかと思うとそれだけで"人生とは"と考えさせられる。語らずして愛を語る男として右にでるものはいないトランティニャンだが、本作品でも表情や沈黙で観客に語りかける。しかし、彼の考えていることの全てを理解することは不可能だと感じた。ジョルジュがアンヌに対する感情は、他の何者にも理解できない深い深い愛情だからだ。
静かな二人の老後の生活を作品全体の空気感で表現している。
カットの少ない演出は、観客をじりじりと二人の世界観へと引きずりこむ。残酷なまでにリアリティを追求し、苦しくも美しい作品だ。
美しさ、儚さ、愛おしさ、それだけでは表現できない、大きなテーマがちりばめられている。人生、愛、そして死。誰もが直面する逃げられない運命を真正面から描いており、ワンシーンワンシーンに胸打たれる。
自分の死を受け入れることと、他人の死を受け入れること。ジョルジュとアンヌのそれぞれの瞳に映る現実を通して"死"の存在を考えさせられた。
人生の節目節目で見返したい作品である。
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