劇場公開日 2013年3月9日

  • 予告編を見る

「初めてハネケ作品に好印象を持ったのは持ったのだが…」愛、アムール 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0初めてハネケ作品に好印象を持ったのは持ったのだが…

2013年9月8日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

難しい

昨年のカンヌ国際映画祭パルムドール、本年度アカデミー賞外国語映画賞を受賞したミヒャエル・ハネケ監督作。
正直、ハネケ作品は苦手。本作同様、カンヌでパルムドールに輝いた前作「白いリボン」も生理的に駄目だった。唯一印象に残ってるのは、「ファニーゲーム」くらい。
話題作なので、覚悟を決めて鑑賞。

共に音楽家のジョルジュとアンヌの老夫婦。ある日、アンヌを病が襲い、入院を拒むアンヌをジョルジュは献身的に介護する…。

これまでのトゲトゲしい作風が消え、ハネケ作品で初めて好印象。
老夫婦の姿を、淡々と静かに見つめる。
決して万人受けする感動作やハートフルな作品ではない。老いや死、老人が老人を介護する現実を痛々しいまでに描いたハネケの演出は深い。

ジャン=ルイ・トランティニャンとエマニュエル・リヴァは誰にも真似出来ぬ名演。
リヴァはオスカーを受賞すべきだった。受賞した「世界にひとつのプレイブック」のジェニファー・ローレンスの魅力的な演技も、強力ライバルだった「ゼロ・ダーク・サーティ」のジェシカ・チャスティンのパワフルな演技も素晴らしいが、やはりリヴァが受賞すべきだったと思う。
トランティニャンもノミネートされるべきだった。

高齢化社会の日本において、本作の題材は無視出来ない。
老人が老人を介護する。もし、二人同時に倒れてしまったら、どうすればいいのか。
映画では、二人は上流階級で、周りに娘や音楽家の弟子が居るとは言え、やがて孤立していき、その厳しい現実は変わらない。
そして、行く末に出した決断は…。
崇高な愛、深い愛などと言われているが、とてもじゃないけど美談では済まされない。
初めてハネケ作品に好印象を持ったのは確かだが、やはりこれまで同様、残酷な面も突き付けられた。

近大