「見たくない現実をみる」愛、アムール xtc4241さんの映画レビュー(感想・評価)
見たくない現実をみる
ハイネ監督は僕らが見たくない現実を描く。
でも、それは決してネガティブな行為ではなく、
ポジティブな意味を込めて・・・。
そうですよね。
「ファニーゲーム」ではわけもわからないまま、不条理な暴力に蹂躙される
夫婦を。「白いリボン」では、わけもわからない出来事によってナチスドイツをおびき出してしまう悲劇を、描いていたと思う。
そして、今度はわけがわからないということはない。
誰でも経験しなくてはならない問題を提起している。
「老い」「死」そして「愛」。
突然、襲ってくる出来事にどう対処するべきなのか?
正解もないだろう。何が倫理的なのかもないのだ。
かっこよく言えば「尊厳死」なのかもしれないけれど、
夫はそのとき、深く考えていなかった。
そう考えたときはもちろん、あったろう。
でも、そのときは夢中になっていたというべきだろう。
それは衝動的なものだったと思う。
そう、人間の考えなんて、行き着くところ、計算なんてないのだ。
でも、映画としての画面は極めて計算されている。
構図はおそろしくストイックだし、音は細部に渡っている。
蛇口から流れる水の音。ページをめくる紙のおと。
夫婦の息づかいもリアルである。
そんな静謐な世界に内なる激しい息遣い。
「老い」「死」そして「愛」
僕はこんな作家を支持します。
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