「ただ、愛だけ」愛、アムール Garuさんの映画レビュー(感想・評価)
ただ、愛だけ
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映画として特筆すべき点は、冒頭からいきなり悲惨な結末が明かされること。 その上で、そこに至るまでの夫婦の介護生活が2時間たっぷりと、極めて精密に描かれていく。 その介護生活は、長年連れ添った夫婦の愛の深さを十分に感じさせてくれるもので、観ていて心が温かくなる。 フランスのベテラン俳優である二人の演技が、実にリアルで素晴らしい。
それだけに、「なぜ、一体どんな形で、いつ、冒頭で明かされた悲劇的な結末へとつながってしまうのか…」という気持ちを持ちながら老夫婦の介護生活を観ていくことになる。 そして最後、ついにその瞬間が来るのだが、夫婦の愛情関係はもう十分にわかっているので、夫の短絡を責める気持ちには、もちろんならない。 なんというか、諦念のような気持ちに心を留めさせられるのだ。
終始重たい静けさを湛えたこの映画は、タイトルに「愛」が付いているように、夫婦の愛情を描いた作品だ。 老いと死という人生の影の面を背景に、愛という陽の面を写実的に浮かび上がらせた、フランスならではの、深い愛の哲学を語った映画と言っていいだろう。
私は、3年経った今でも、あれやこれやと母の死に対して後悔と懺悔を繰り返している。 身内の死にまとわりつく罪悪感は、誰でもそうかもしれない。 でも、せっかくこの映画を観たのだから、善悪に苦しみ孤独に喘ぐばかりではなく、もっと愛の喜びに目を向けて生きた方がいいのかもしれない、と思った。
深い愛情を有難う。 永遠の幸せを願っています。
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