「最高のトム・ハンクスを見た」キャプテン・フィリップス マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
最高のトム・ハンクスを見た
今年観た映画で文句なしにTOP3に入る。
実話はストーリーの展開に制約があるが、細部までよく練られた脚本と、実写をふんだんに取り入れた作りものではない映像、出しゃばらない音楽、それにスピーディーで必要な情報を逃さない編集、いずれも超一級の仕事だ。
大きなスクリーンを、波を掻き分け進む大型コンテナ船マースク・アラバマ号のスケール感は圧倒的。そのアラバマ号との距離を詰めようと、航跡波をものともせず小型船で追う海賊たちの死に物狂いの形相はとても演技とは思えない。
独り人質になった船長を救うために繰り出される救助部隊。国を挙げての救助作戦はアメリカならではだ。日本だったら、事実関係の情報収集に追われるだけで手も足も出ない。国民の生命と財産を守るのが国家の使命という当たり前のことができる国は強い。
軍歴のないごく普通の船長と、漁師が武器を持っただけの海賊。玄人の駆け引きが存在しない一触即発の危うさが緊張の糸を今にも引きちぎれそうなところまで引き絞る。
救助を待つフィリップ船長。何もせずにじっとしている方が安全な局面でも行動してしまう。それは助かりたいという希望よりも、もう伝えられないかもしれない家族への思いをなんとか形にしておきたいという切なる願いからだ。
この気持ちがラストで涙となって溢れ出る。
海軍の女性衛生士は女優ではなく本物だそうだが、素晴らしいラストシーンを作り上げた。
最高のトム・ハンクスを見た。
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