「リアル。さすがポール・グリーングラス。」キャプテン・フィリップス 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)
リアル。さすがポール・グリーングラス。
実話の映画化。
監督のポール・グリーングラスは、9.11で唯一目標に達することがなかったUA93便を描いた『ユナイテッド93』も描いているが、こう言う緊迫感の有る、リアルな作品は得意なんでしょうね。『ユナイテッド93』の時も、実際の軍人や管制官を撮影に参加させていますが、この作品でも、実際の駆逐艦を参加させてリアリティを追求しています。
いやぁ、予告編のイメージとはちょっと違いましたが、むしろ、いい方向に違っています。と言うのは、劇映画ですので、無駄に盛り上げたりするのかと危惧していたのですが、むしろ、起こったことを淡々と描いて緊迫感漂う作品に上手く仕上がっています。殆どが、海上・船上のシーンで、まさにフィリップス船長に降りかかった出来事を余すこと無く描いたという感じです。
やっぱりトム・ハンクスですよねぇ。いやぁ、一番すごいと思ったのは、実は、救出後、医務室で自失呆然の状態であったシーン。本当に生命が風前の灯になって、間一髪で救出されたら、ああ言う虚脱状態に陥るのかと。それをリアルに、本当にそう言う目に遭ったかのような演技をしていました。凄い。ちなみに、その時の、オブライエン看護師長を演じたダニエル・アルバートは、実際の海軍衛生兵らしいです。そんなところまで、リアル!
それと忘れてはいけないのは、海賊の面々でしょうね。ソマリア人から選ばれたそうです。もちろん、本当の海賊では無いわけですが、画面では海賊になりきっていましたね。実際の所、役作りのために海賊に参加するわけにも行かないので、苦労したのだと思いますが、中々どうして。上手かったです。
フィリップス船長の救出には、最終的にSEALsが出て来るわけですが、SEALsだからと言って、強襲だけには限りません。こちら側も揺れ動く艦上、標的も揺れ動く船上、そう言う悪条件で狙撃を決めるところは、SEALsの練度の高さを示しているのだと思います。それにしてもなぁ、作戦地域への合流の際、パラシュート降下なんだ。
海賊のリーダー・ムセの劇中のセリフで、「アメリカに行く。NYで贅沢をしたい。」と言う趣旨のセリフがあります。そしてエピローグ。フィリップス船長が救出され、ムセが拘束された際、「アメリカに行くぞ」と拘束した兵士たちに言われていたのは、これは、敢えて、そう言うセリフを入れたんですよね。同じアメリカに行くにしても、全く意味が異なるとして。
それと、海賊たちが「俺達は、アルカイダじゃないぞ」と仕切りに言っているのも、この事件・時期の背景を感じさせますね。アルカイダ=テロリストなわけで、誘拐犯とは全く異なり、容赦なく排除されてしまいますからね。
偽計を用いて撃退した一回目の襲撃、そして、乗り移られたものの人質に取られてしまったフィリップス船長以外は被害を出さなかった二回目の襲撃。このマースク・アラバマ号襲撃の話は、フィリップス船長が4日間人質になったものの無事救出されたと言うことだけではなく、マースク・アラバマ号の乗組員たちが一致協力して、マースク・アラバマ号から海賊を排除したということも、成功裏に事件が解決した重要な要素であったと思います。
いやぁ、すごかった。