「こんな歴史映画があってもいいじゃないか!」ジャンゴ 繋がれざる者 Akiさんの映画レビュー(感想・評価)
こんな歴史映画があってもいいじゃないか!
昨年の夏から待ち焦がれていたジャンゴをようやく鑑賞することができた。
あえて平日のレイトショーを選び、私とあと二組しかいない、ほぼ貸し切り状態で臨んだ。
結論としては、私の中ではここ5年の最高傑作といえる。
もちろんタランティーノの大ファンだから、点数はかなり甘いんだろうと思う。
しかし、前作のイングロリアスバスターズをあまり好きになれなかった私としては、ひさびさに気持ちよくタランティーノ作品を見せていただいたので評価アップしまくりだったんですよ。
イングロリアスバスターズでのクリストフ・ヴァルツは最高だった、もっと彼の演技を見せてくれ!ブラピいらんから!と、渇望したくなるほどだったが、ジャンゴでは彼の名演技をたっぷりと見させてもらって大満足。
最後のシーンで男のプライドを貫き通した時など、ストーリー的には(アチャー)な行動だったんだろうが、私はこれぞ男!とばかりに心の中で拍手喝采。
どちらかというと本来のエンディングシーンよりもあのシーンにグッときてしまった。
そしてディカプリオの素晴らしさときたら!
今まで軽蔑してました、ごめんなさい。
イングロリアスバスターズでのあのブラピのドヤ顔演技が鼻について仕方なかった私は、最新作にはディカプリオが出ると聞いてガッカリしたもんだった。
それがどうよ?ものすごくナチュラルに、南部のアホボンを演じ切れているではないか!
ホント、ブラピみたいなエラ張りダイコンなんかと同一視した私が申しわけなかった。
そしていつものタランティーノ組の人たち。ファンとしては、彼らをスクリーン上で認める度に嬉しくなってしまう。
超芸達者のマイケル・パークスにスタントマンの姉ちゃん、サミュエル・L・ジャクソン。。。
しかし、今回のサミュエル・ジャクソンの役柄は衝撃的だった。今まで彼が演じた役柄の中で一番黒かったんじゃないですかね?
てか、あんまり映画見ないので、サミュエル・ジャクソンが悪役した記憶がないんですけど、あった?
だいたい責任感があって、正義感があって、主人公に的確なアドバイスを与えるような良い役ばかりの印象があるんだが、今回ばかりは真っ黒。
アンクル・トムを大げさにディフォルメしたようなベタな奴隷頭キャラなのに、3代目ご主人様であるアホのディカプリオと二人っきりになったらふんぞり返って酒飲みながら指示を出す影の支配者。
あれはあれでかっこよかったけどね。
そしてタランティーノご本人、ホント彼は自分の作品中で一瞬で死ぬ役が好きだねえ。今回も気持ちいいくらいアッサリした死にっぷり。お約束大好き。
さて、ストーリーだが、やはりモチーフをホロコーストから奴隷制度に変えただけで、ベースはイングロリアスバスターズと同じ。
歴史を独自に解釈し、エンターテインメントを混ぜ込んで、ヒーローが悪者をぶっつぶして気持ちの良い作品にしたもの。
イングロリアスバスターズではヒーローは女性(しかしヒロインという語感に違和感)で、最後に死んでしまうという後味の悪さが残ったが本作品は非常にサワヤカで痛快な物語だった。
グロシーンが結構出るのでR15だけど、お子様もお年寄りも楽しめる勧善懲悪ストーリー。
私が戦国自衛隊が大好きな理由が、この映画で少しわかったかもしれない。
歴史上起こりえなかったことを、痛快なヒーローものとして起こしてしまう物語。
日本だと「歴史を歪めるのはダメだ」なんて識者が反対するだろうけど、同じ物語を、今度は沖縄戦、もしくはアメリカの日本兵捕虜収容所あたりをモチーフにして作ってもらいたい。
きっとスッゲエ気持ちいいだろうなあ。