ジャンゴ 繋がれざる者 インタビュー: クエンティン・タランティーノ監督を突き動かす故深作欣二監督の言葉

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ジャンゴ 繋がれざる者

劇場公開日 2013年3月1日
2013年2月25日更新
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クエンティン・タランティーノ監督を突き動かす故深作欣二監督の言葉

映画という映画を見尽くしてきたクエンティン・タランティーノが、「最も好きなジャンル」と言ってはばからないのが西部劇、なかでもマカロニ・ウエスタン。ビデオ店の店員だったころから「いつか俺なりのウエスタンを撮りたい」と願ってきただけに、語るべき物語は独創的なものでなければならない。そんな高いハードルをクリアするアイデアが生まれたのは、東京でのことだった。(取材・文・写真/若林ゆり)

「奴隷のヒーローをマカロニ・ウエスタンのスタイルで撮りたいってアイデアは、10年以上前からもっていたんだ。最初の構想は、奴隷が賞金稼ぎになって白人を追うっていうものだった。南北戦争前の南部でね。そうなると西部劇じゃない、南部劇ってことになるんだけどさ(笑)。ただ、具体的にどんなストーリーにしたらいいかはずっとわからなかったんだ。ひらめいたのは、『イングロリアス・バスターズ』のプレスツアーで東京にいたときだ。日本ではレアなマカロニ・ウエスタンのサントラが山のようにゲットできるから、そのときも20枚くらい買って部屋でほくほくしながら聴いていた。そうしたら突然、映画のオープニングのシーンが浮かんできたんだよ」

それにしても、大胆な映画だ。奴隷制度というアメリカ史のタブーに真っ正面から切り込みながら、笑いどころが満載で痛快。「物議を醸す作品になるってことは最初からわかっていたし、一部の人たちからバッシングを受けることになるのもわかっていた。でもさ、勇気なくしてアートなんて成り立たないんだよ。リスクをとらないで何がアートかって俺は思うね。誰が俺の作品を気に入らなかろうが悪く言おうが、そんなことは気にしない。俺が気にするのは、それがエキサイティングなアドベンチャーかどうか、観客を喜ばせることができるかどうかってことだけだ。俺がいちばん望むのは、ラストで観客にウォー! ってエキサイトしてほしいってことなんだ」

もうひとつ意外だったのは、軸となるのが正真正銘のラブストーリーだということ。主人公ジャンゴの目的は、別れ別れになった妻ブルームヒルダの救出なのだ。

「ジャンゴを動かすのは復しゅう心じゃない、愛なんだよ。このことを思うとき、俺は深作欣二監督の言葉を思い出すんだ。日本語の“仁義”って言葉は、英語には適した訳語がない。で、深作さんに聞いたら、こう答えてくれた。『仁義とは、やらなきゃならないことだ。たとえもしこの世でいちばんしたくないと思っていることだとしてもな』。この映画に照らし合わせると、ジャンゴはせっかく自由になってどんな人生でも選べるというのに、逃げてきたはずの地獄にまた舞い戻っていく。なぜかといえば、愛する女性が1分でも長く奴隷の身でいることに耐えられないから、それを看過したままで生きていくことはできないからだ。これこそ“仁義”そのものだよね!」

タランティーノ映画の例に漏れず、脇キャラのユニークさも絶品だ。前半を引っ張るのは、タランティーノが「俺のミューズ。新しいユマ・サーマンだ(笑)」というクリストフ・ワルツにあて書きした、元歯科医のドイツ人賞金稼ぎ、ドクター・シュルツ。レオナルド・ディカプリオは自ら立候補して、奴隷制時代の白人たちの悪徳を一身に集結したような大農園オーナー、カルビンを熱演。そのカルビンにべったりで、黒人であるのにもかかわらず黒人をいびり倒す奴隷頭スティーブンを、サミュエル・L・ジャクソンが怪演する。

「スティーブンは、俺が書いたなかでも最高のキャラだよ。実は最初の構想では、サム・ジャクソンはジャンゴの役だったんだ。たとえばオープニングの後で、10年後っていう形でサムが登場するとか。でもいざ書き始めたら、ジャンゴはずっと若いままでさ。で、おっと、サムはどうしようって思ったとき、スティーブンが生まれたんだ。で、電話でサムとこういうやりとりがあった。『書いているうちにジャンゴは若くなっちゃったんだよね』『ああ、気づいている』『それで、スティーブンについてどう思う?』『どう思うって、どういう意味だ?』『あ、あの、そのキャラ好きかなあって……』『つまりおまえが言いたいのは、あの映画史上最悪の黒人を俺がやることに問題あるかってことか? 問題ねえよ。ねえけど何か?』。彼がやる気になってくれてホッとしたよ!」

監督デビューから20年あまり。念願の西部劇は、タランティーノに大きな達成感をもたらした。「すごく思い入れの強い、特別な作品になったよ。ウエスタンを撮りたいって思いを遂げられたし、アメリカの原罪を包み隠さずに描き、黒人ヒーローを描くことができて、しかも観客が楽しめる映画にできた。誇りに思うよ。リスクはばかでかかったけど、その分だけの大きなリターンが得られたこともすごくうれしいんだ。20年やってきたけど、俺はいまだに自分のイチモツを差し出すくらいの覚悟で映画を作っているんだからなっ!(笑)」

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